共感的コミュニケーション(NVC)について、テンダーなりの解説

共感的コミュニケーション(NVC)について、テンダーなりの解説
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テンダーの思う共感的コミュニケーション(NVC)

僭越ながら、わたくしテンダー、NVC(と、ソーヤー海)に出会って早3年くらい。
そんなに長い時間を勉強に注いだわけでもないのだけど、それでも敢えて自分で書く意味を感じているので、従来のNVC紹介とは違った方向から、試みにまとめてみます。
(微に入り細を穿つようなところは、画竜点睛になるけど大胆にはしょった! わかりづらくなっちゃうから)

だからきっと、わかりやすいはず!

1.私たちは今のところ、人の「行動」をとやかく言う世界に生きている。

共感的コミュニケーション(NVC)について、テンダーなりの解説

例えば、待ち合わせに5分遅刻する。すると往々にして

「なんで遅刻したんだ!」

と怒られる。

この時、相手はこちらの気持ちに焦点を当てないし、意図も気にしない。その人の内部事情の全ては差っ引いて、最終的に表面に出て来た行動だけを、やいのやいの言うわけです。

行動だけをやいのやいの言う場面は例えば、

「あなたはいっつも家にいないじゃない!」

「なんでこんなに買い物したんだ!」

「こんな企画書を出すなんて、お前やる気あんのか?!」

などなど。

うう、書いてて痛い。

2.だけど、同じ行動に見えてもその理由の発端は、人や状況によって違う

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仮に、5分遅刻した人が2人いたとして、それぞれの理由を聞いてみたら、

「30年取り組んだ研究の、完成につながるような驚きのニュースがTVで放送されてたので、目が離せなかった」

という答えと、

「時間を守ることに意味を感じないから」

という答えとがあれば、

遅刻された方の怒る度合いも、それぞれ変わってくると思うのね。

前者の理由は、共感しやすいと思う。5分の遅刻(=自分よりも優先されてもいい物事の量)を越える理由がある、と多くの人が思いやすいだろうから。


だけど後者の場合は、心の部分が見えづらく共感しにくいので、「これだから最近の奴は・・・」みたいになりやすいと思う。

もしその時に、

「僕の国では、時間通りに来ることは失礼にあたり、少し遅めに着くくらいでちょうどいいとされている。このカッチリと決めない文化の結果、多くの人が温厚で争いのない風土ができているんだ。そんな自分の国の文化に、僕は誇りを持っている」

という説明があれば、怒りの気持ちや会話の質に、多少なりとも変化が生まれないだろうか。
(「じゃあそれは、待ち合わせを決める前に言ってくれよ!」とはなるかもしれないけど、そのやりとりは相手の「誇り」を全否定してかかろう、という気持ちからではなくなるのでは、と思う)

「5分遅れて待ち合わせ場所に来た」という行動はどちらも同じだけど、その行動の発端は、人や状況によってそれぞれ違う。

だから、行動自体をやいのやいの言うより、

行動の発端(=出どころ)を、ちゃんと双方ともに了解し合うコミュニケーション方法をしてみませんか? というのが、テンダーの思うNVC(共感的コミュニケーション)のとっかかり。

やあ、めっちゃ短くまとめた!
嬉しい!

3.話している内容と、意図は大抵一致してない

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そのうえで補足。

遅刻した相手に

「なんで遅刻したんだ!」と怒る場合、

おそらく怒ってる人は、遅刻した理由を知りたいわけではない。

きっと、
「自分が感じた不安や悲しみを、お前にも同じくらいの強さでわかってほしい」というメッセージを込めて、

「なんで遅刻して来たんだ!」

という言葉になっちゃっただけなんだと思うのね。

4.率直に言う

そういう風に、言葉が言葉としての意味によって機能しないと、余計にもめるので、

NVCの仕組みでは、感じたこと、わかってほしいことをなるべくそのまま言うことを大事にしていて、それを「率直さ」と呼ぶ。

「なんで遅刻して来たんだ!」という言葉は、率直に怒りを表現している、とは言わない。

「お前が待ち合わせの時間に来なかったことで、俺がどれだけ心細かったかわかってほしい!」
というのは率直な表現だと思う。

6.命令は一言、対等は長文。

そして相手にも尊厳があり、人格があり、事情があり、自分と対等な存在として敬意を持って、自分の思いを率直に伝えるなら、

「君と約束した時間に、君がここにはいなかったことで、僕は言いようのないほどの不安を感じた。君から僕は嫌われてしまっていて、もう会うことがないかもしれないと想像して、とても悲しくなったんだ。この気持ちをわかってもらえるだろうか」

と言えるのかもしれない。

だけど、日常でそんなに長く話すと大変だし、話し方の練習もしていないだろうし、いきなりそんなこと言われても言われた方も困っちゃうだろうから、だいたいは命令文になるのが今現在の日本。

「ちゃんと来い!」

命令は一言、対等は長文。

(これは、対等であることが非日常であることの表れだと私は思う)

7.それでも実際は、みんな対等だから。

クラウドファンドcampfireリターンキャンプ、1回目はこんな感じでした!

最後に、

・自分はとっても大事で尊重される存在で、その事情は確からしいものに感じられるように、
・他者もまた、まったく同じように、尊重される存在である

から、

義務感からではなくて、
対等さによって

自分の行動の発端と、相手の行動の発端が同じように尊重され、
その双方の行動の発端、双方の意図を満たすために望んでできることは何だろうか? とやりとりが発展することを目指すわけです。

そして、ともすると見失うけど、意図を満たす手段は無限にある。

例えば、電力自給したいけどクーラーがどうしても必要、という人は多いのだけど(そしてクーラーはかなり電気を使う)、
その人にとって本当に必要なのは「クーラーという道具」ではなくて、「快適さ」だったり、「手軽さ・気楽さ」だったりするわけです。

だったら、「手軽に快適さを満たす」もので、電気をなるべく使わないものを探した方が、目的地に近づけるかもしれない。

というわけで改めて書くと、

お互いが率直に行動の発端や意図を話し合い、それぞれの発端と意図が尊重される手段を探すための会話術、それがNVCだ!(たぶん)

おまけ:その他、思ったことや、気に入ってる言葉など

きっとNVCのワークショップに行くと「観察・感情・ニーズ・リクエスト」の4つの視点がNVCの基本、みたいな話になると思うんだけど、かえってそれが、壁や困難を作りうると感じることが度々ありまして。

「感情」「ニーズ」「共感」といった言葉に惑わされてしまうというか、
それって学問的な分析の話なので、そこから始めると「NVC的定型」に人をはめるために運用しちゃうというか。

あと、芸術家や役者でもない人に、「いきなり感情をあらわに!」と言っても、だいたい不自然でおかしなことになる印象

あとはいきなり感情表現を求められるとドン引きする人が一定数いると私は思う。

そうなると、せっかくの素晴らしいものなのにもったいないなあ、と思うので、意図的に4つの視点は抜いて説明してみました。

というわけで、かなり荒くまとめたけど、以上、テンダーの思うNVCでした!


以下、NVCを通して私が触れた、キュピーンときた言葉や視座。

・NVCの目指すところは温和な聖人君子になることじゃなくて、率直であること。

・評価をやめて「観察」すること。(写真に写るのは観察、映らないのは評価。例えば金髪でバイクに乗ってる人は写真に写るけど、ヤンキーという属性は映らない=それは勝手な評価)

・全ての会話が表現しているのは詰まるところ「お願いします」か「ありがとう」

・NVCが答えなのではなく、NVCのある人生も、NVCのない人生も、同じように素晴らしい(自身の実感から)。

・「NVCを学んでも、今までうまくいってることは、絶対に変えないでください」(NVC合宿前の、ある講師の言葉とのこと)

・「間違った行ないと正しい行ないを超えたところに野原が広がっています。そこで逢いましょう」
Out beyond ideas of wrongdoing and rightdoing there is a field. I’ll meet you there.
詩人 ルーミー

というわけでNVCのワークショップもやるよ

そしてそして、7/22はNVCの伝道師、安納献さんと市谷リコさんを鹿児島に呼んでWS!

7/22 安納献と市谷リコの、共感的コミュニケーション入門ワークショップ

初歩から説明してもらいます。この機会にぜひ来てー!

追記:
NVCという言葉は商標があり、The Center for Nonviolent Communication による認定トレーナー制度があり、認定トレーナー以外はNVCという言葉の使用を差し控えてくれ、というリクエストがあります。

これは、NVCの一貫性を保つためであって、利権のためではない、と私は解釈しています。

そのうえで、今回のタイトルは「NVCってよくわかんない」と思ってる人のために書いた記事なので、そのタイトルからNVCを抜くと目的が達成できなくなるので、あえて入れました。ちなみに私はCNVCの認定トレーナーではないので、後ろめたい気持ちもあり。

共感的コミュニケーション(NVC)について、テンダーなりの解説

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この記事を書いた人

考えて、作り、実践して、伝える作業を繰り返しています。 版元を作り出版した著書「わがや電力」は直販にて15000部を売上げ。 先住民技術、NVCとシステム思考、環境再生技術の知恵を使い、生態系を模倣する文明を研究中。鹿児島の廃保育園にて環境問題を解決するための工房・ダイナミックラボを運営

コメント

コメント一覧 (6件)

  • テンダーさんの紹介で初めてNVCを知ってマーシャル・ローゼンバーグさんのyoutubeの動画を見ました。

    自分の経験から「怒りをぶつけずにお願いをする」という話し方を友達に説明したことがあるんですが、「みえちゃんみたいに上手にはできない」と答えられ、自分が無意識にしているコミュニケーション方法の理解不足、説明不足と役に立ちきれてない感がありました。

    「観察・感情・ニーズ・お願い」というシンプルな言葉を教えて頂き、伝えやすくなったように感じて、とても嬉しいです。

    叫び罵る人について、感じ方が変わりました。

    血をダラダラ流している人は、救急車を呼んでもらえるけど

    ハートが血だらけで罵っている人は、救急車を呼んでもらえないですね。

    NVCについて私も理解を深めながら広めたいです。

    紹介していただき、ありがとうございました(^-^)

    • 「NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法」という書籍がオススメなので(安納献 監訳)、興味がありましたらぜひご一読くださーい!

      • テンダーさんの「わがや電力」、
        NVCの本、
        テンダーさんの紹介で知った
        ソーヤー海さんのパーマカルチャーの本、
        注文しました!
        トラッカーも図書館で予約しました!
        絶賛 到着待ちです!
        ありがとうございます!

        • おお、トラッカーもオススメです。
          北米先住民の本では他にも「グランドファーザー」というのもオススメです。

          まあまたの機会に!

  • 10数年前に、V.E.フランクルさんの「夜と霧」を読み

    強制収容所という
    苛烈な状況でも善良さを失わない人って、なんだろう?

    宗教の戒めとかを守ってるからかな?とナゾだったんですが、

    NVCの本の しょっぱな に、当人の心の声が載っていて「おお!」と思いました。

    願わくば そんな人になりたい。と思ったヒントが出てきて嬉しいです。

    まだ読み終えてないのに感想を寄せてすみません。

    感動が大きかったもので。

    ありがとうございます。

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