バイオジオフィルター

[campfireリターン特典] バイオジオフィルターの諸情報

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この記事は Campfireの「臭いものに蓋をしない下水オーナーコース」のリターン品です

臭いものに蓋をしない下水オーナーコース
・廃校に設置する、環境を汚さず生命を育む自作下水(生活雑排水用)の材料費に充てられます。
・この排水の栄養素が、ラボのパーマカルチャーガーデンの有機肥料になります。
・下水の設計図と使ったものリスト、原理の解説図をお届けします。

campfireでご支援いただいた皆様、大変お待たせしました!
決して忘れていたわけではなくて、あれやこれや考えていたらどんどん時間が過ぎてしまい・・・本当に申し訳ないです。


そして、これまたこちらの事情で重ねて申し訳ないのですが、

・ダイナミックラボのバイオジオフィルター監修者の四井真治さんとの取り決めで、詳細な設計図を公開することができない。
・ちなみにダイナミックラボで製作した四井版バイオジオフィルターの様子はこちら https://sonohen.life/biogeofilter-complete/

という状況で苦悶しておりました。


ただし、四井さんから
「ネットで公開されているような一般的な原理図について、僕がどうこう言うものではない」とも言ってもらっていたので、ネット検索で見つけられるものを、よりわかりやすく合理的に解説しようと思います。(特に四井版より大幅に性能が落ちるということはないと思います)


というわけでリターンの文言とは、多少お届けできるものが変わってしまうのですが、どうかご理解くださいませ。


それではいってみよう!

2021. 6/25 リターン提供から半年以上が経ちましたので、一般に公開します。

バイオジオフィルターの原理

簡単な解説

1.高性能な合併浄化槽や公共下水の排水(=中水、グレイウォーター)ですら、30%前後のチッソやリンが含まれている = 浄化槽系の下水では、チッソやリンは取りきれない


2.そしてそのチッソやリンが残っている排水が川に流れ込み、それが海に到達して赤潮が起きている(=海水の富栄養化。水のチッソやリンが多すぎることによって、微生物や藻が大繁殖し、それらが死に分解される過程で水中の酸素がなくなり、魚介類が酸欠で死んだり、他所へ逃げたりしていなくなってしまう現象)まで抑制できうる!
3.かたや畑では、チッソやリンはわざわざ買ってきて、肥料として漉き込む材料である


4.そして作物はチッソやリンを栄養素として吸収するので、作物ができると土中のチッソやリンは減少する


5.だったら、排水をそのまま水耕栽培プラントに流し込んちゃえば、排水中のチッソやリンは減らせるし、赤潮もなくなるし、食料も生産できちゃうじゃん!


てのがバイオジオフィルターの概略です。


この時に、チッソやリンの除去性能を左右するのが


・排水の滞留時間


・ろ材の種類(主にリンに作用するっぽい)


・植生(主にチッソに作用するっぽい)


あたりのようです。


※ 他は気温とかもあるけど、気温は変えられないのでここでは割愛。
※ その他、ポンプを入れたり、エアレーション(曝気、空気を入れること) など電動化の道もあるけど、持続可能じゃないのでやっぱり割愛。

よりどころとなる論文を探そう


まず、バイオジオフィルターというのはおそらく和製英語なので、Biogeo filter とググっても情報が出てきません。
バイオジオフィルター PDF」とかで検索すると、信頼性の高いソースがヒットします。


その中でも割合わかりやすいものをピックアップ。

[絵があってわかりやすい] 有用植物を用いた生活排水の循環・共生型水質浄化システムの開発(1997)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswtb1964/33/3/33_3_97/_pdf/-char/ja

[写真たくさん] 植物を利用した水質浄化システム(第3報)―年間を通しての水質浄化―(2001)
http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Simple/179/396/1602tamura.pdf

[植物による性能差などが記載してある] 水質浄化に利用可能な植物データベースの構築(2001)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sesj1988/14/1/14_1_1/_pdf/-char/ja

[まじめな感じ] バイオジオフィルターによる高度水処理(1987)
http://bit.ly/2utPdn8


その他。

鹿沼土を濾材とした植物―濾材系水路の水質浄化特性(2005)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswtb/41/2/41_2_51/_pdf/-char/ja

この論文に付随するその他論文
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902283630942873


「え? まず論文読まなきゃダメなの?」ということではないので安心してお進みください。
ただ、上記論文からの情報を集めて考えていますよ、ということなので。


性能の目安


面積、使うろ材と植生などで諸々変わるものの、以上の論文を横断的に拾い読みした結果の目安を載っけておきます。


・流出水を綺麗にするには、1人当たり3㎡のBGF水路が必要
・冬以外で70%の除去率を確保するには1人につき5〜6.5㎡


・9.5時間の滞留(水が浄化槽側から排水側に移動する時間)で、炭素は30%以上、窒素・りんは80〜90%以上除去できる


・ろ材に吸収された窒素とリンを空芯菜は吸収する(流入水のNP濃度が低くても生育する)(NP濃度というのは窒化リンの濃度)


・空芯菜は窒素の70%、リンの30〜40%を除去する


・ゼオライト(ろ材)はアンモニア態窒素に効く(プラスイオンを交換する能力が高い)
・鹿沼土(ろ材)はリンに効く


・石灰硫黄合剤の触媒は、使うことで窒素を取り除く役に立つ
(硫黄を酸化する独立栄養のバクテリアがいる)


・四井さんいわく、バイオジオフィルターの終わり際ではワサビが育つらしい!


おまけ
・腐植質(腐葉土みたいなもの)を塩素処理するとトリハロメタン(発ガン性物質)が生成される=バイオジオフィルター後の水は塩素処理しない方が無難!

実際にやってみて、調べてみて思うcampfireリターン仕様


先に挙げた「有用植物を用いた生活排水の循環・共生型水質浄化システムの開発」の一番最初に出てくる挿絵、

バイオジオフィルターの諸情報


このモデルがバランス良くて良いのでは、と思いました。
もうちょい描き足すとこんな感じ。


このように、バイオジオフィルターの入り口側に浄化槽側からの排水を入れる。


そして、バイオジオフィルターの終わり側を池なり田んぼなりにすると、より水が雨水レベルの綺麗さに近づく&生態系も涵養できる!


池などの後は、側溝などに放流か、地下浸透だと思う。

良いと思ったポイント


・掘る深さが浅いので、作るのが楽
・浅いので、プールシートなど材料が少なくて済む
・やり直し・改良がしやすそう
・ろ材をカゴに入れてユニット化するので、万が一目詰まりが起きたり不具合が発生してもそこだけ調べ交換できる

やってみないとわからないところ、デメリットのポイント


・ろ材をカゴに入れるので、カゴがプールシートに穴を開けることもありそうでちょっと心配。
・カゴ代がかかる(ただし、ビールケースとか、廃材で十分いいと思う。ちなみにビールケースは幅が350~370mmなのでちょうどいいと思う)

材料

シート系


・プールシートと呼ばれるPVC(塩ビ)シート
厚さが0.5mmあれば十分
https://www.monotaro.com/p/5783/6843/

・PVCシート用接着剤

・シリコンコーキング剤

・コーキングガン

・ステン針金(1mm径くらい)

ろ材系


3〜5mmくらいの粒度の、


・シラス軽石
・もしくは鹿沼土(かぬまつち)
・もしくはゼオライト
・もしくは素焼きの鉢の割れたの大量に、とか古い瓦大量に、とか。


を、必要な体積分。


※ お住いの地域で産出されるものが良いと思います。


あとは、
・かごになるもの(ビールケースなどがいいと思う。ビールケースの場合は内側にステンレスの網を張ればろ材が漏れにくくなる)

配管系


・塩ビ管(イン側、ご自宅の浄化槽排水管に適合する太さのもの)(ダイナミックラボの場合、100mm径と150mm径と、2種類必要だった)と、その継手類

・塩ビ管100mm径(アウト側)* 1M

植生系(種なり苗なり)


・空芯菜

・ケナフ

・その他水耕栽培できる植物

作成手順


論文PDFで紹介されてるもののアレンジ版。

1. 穴を掘る


20M(長さ) * 40cm(幅) *40cm(深さ)


このくらいの大きさなら、一人でもなんとかできるはず。
長さは直線で取る必要はなく、折り返しても良い。


ただし、これで 2.4㎥分のBGFになるんだけど、各種論文によると、一人当たり3㎥必要とのことなので、気分に応じてもうちょい長くしても良い。


それでも、やらないよりかはちっちゃくてもやった方がいいと私は思うので(そして、いっぱい溝を掘るとたくさんの土が出るから、その処理のためにまた土地が必要になるので)、
初めての練習モデルなら、半分の10Mでもいいんじゃないかしら。

可能であれば最後に池を掘る


出口側に池を作ると、より水が綺麗になるそうな。
ただしそのための作業量はとっても増えるので、最初はナシで、後から増やすでもいいと思う。
(ダイナミックラボは池をまだ作ってなくて、土壌浸透させている)

2. PVCシートを敷く(後述で違う方法があり)


先ほど掘った溝は、
側壁高さ40cm *2 + 底面40cmなので、全部足すと120cm。


前述で紹介した塩ビシートが幅1M(100cm)なので、これをそのまま敷くと多分現実的はちょっと足りないのだけど、ろ材を入れる高さは底面から30cmまでなので、そこまで塩ビシートがあれば大丈夫。まあ、、、実際折って入れてみるとちょっと足りないけどね!


(この足りない分を補足するために、塩ビシートを接着するのは結構な手間、かつ20mのシートを広げられる平面の空間が必要なので、足りないのが嫌だったら深さをちょっと浅く掘る方がいいかも)

出口を作る


出口側を水面に合うように作る


これはもう出口に応じていろんなパターンがあるけど、
塩ビシートで塩ビ管を包んでコーキング剤で接着する。
塩ビシートは切らずにうまいことまとめるのがコツ。


コーキングをつけて塩ビシートを巻き終わったら、ステン針金でシートを破らない強さで括る。

3. ろ材を入れる


長さを20Mで作っているのであれば、3.2㎥分のろ材が必要になる。
(※参考までに… 一般的なホームセンターなどで売られているパーライトの軽石の袋が20Lなので、これで計算すると160袋分! ギャー!となるので、採石業者や、軽石を販売している業者さんを探して売ってもらうほうが多分安上がりです)


ダイナミックラボは鹿児島県なので、桜島由来の軽石を、火山学者から紹介してもらった業者さんから買いました。

4. 水を貯める


雨が降れば水は溜まるので雨を待ちましょう。


目一杯水が溜まった状態で、ろ材の下10cmほどのところに水面があれば成功。


水が全く溜まっていない場合は、プールシートのどこかが破れているので、シートを補修するか交換するか、になります。(大変)

5. 種を蒔く


種から空芯菜を発芽することもできましたが、ポッド植えからの方が良さそうな気もしています。(10cm厚のろ材を抜け出て目を出すのは大変そうに見えた)

お住まいの気象条件などでも変わるので、色々やってみてください。

バイオジオフィルターに関する総括の感想


というわけで、バイオジオフィルターと一年半暮らしたテンダー所感。

BGFを作るには条件がある


バイオジオフィルターは万能の仕組みではなくて、いくつかの条件が揃うなら「やらないよりやったほうがよさそう」という性質のものだと思う。


その条件とは


・キッチンや、シャワー、トイレなどの排水を公共下水に直結せずに済む環境があり(これから家を作る or 公共下水のない地域)、


・庭などの敷地がある程度広くて、


・20年後なのか30年後なのか、シートを交換・除去する時が来ること理解している(BGFは半永久的なものじゃない)


てな感じですかね。


それでもBGFを作れば、空芯菜を食べ放題になるし


空芯菜を植えなかったとしても雑草が自生して、そのまま排水を河川に流すよりかは、遥かに良いはず。

意外と大きなプールシート問題


プールシートを使うと、土壌が呼吸できないエリアを作ってしまう(隣接する土がヘドロっぽくなっていく)のと、
プールシートはPVC(塩ビ製)であり、燃やすと毒ガス(塩化水素)が出るので、作り直したり・撤去する時に処分の難しい大量のゴミが出てしまう、ということ。


プールシート問題を解決するには、ベントナイトという、濡れると自己膨張する粘土(=実は猫砂!)を土と一緒にこねて止水膜とすれば、大量のゴミも出ないし、土壌も多少呼吸しやすいのかな、と思います。


※ ただしベントナイトをこねて貼るのは、プールシートを敷くのよりもはるかに手間がかかるので、小さいバイオジオフィルターを作る方向け。


※ また、ベントナイトはアメリカザリガニなど特定の生き物が穴を開けてしまうことがあるので、そういう影響があることもご留意くだされ。


よって、
・そもそも冠水しがちだったり、水はけの悪い場所(密度の高い粘土質)で、


・なおかつそこが浄化槽の排水口から近く、


・小規模のバイオジオフィルターでも良くて(暮らしてる人数が少ない)


・ほどほどの日照もある


などの条件が重なっていれば、


ベントナイト製のバイオジオフィルター向きかでも良いかと思われます。


というわけで一旦共有します。
大変お待たせして申し訳ありませんでした!

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