これはクリス・マーテンソンさんの講義「Crash Course(2014年版)」を安納献さんが翻訳したものです。
※ 経緯はこちら [クラッシュコース日本語訳を、安納献さんの翻訳で公開&アーカイブします]
※ 本文内の太字は、編集・校正をしたテンダーによる可読性を上げるためのもの
この物語の中で、三つ目のE、環境(Environment)に目を向けると、2つのことに気付きます。
地中から取り出される資源の需要が指数関数的に増加していることと、
さまざまな生態系に戻される廃棄物も指数関数的に増加していることです。

ここで、ますます増えるお金と負債を正当化できるかどうかを評価しようとしているので、まずは世界経済を支えるために自然界から取り出している資源に焦点を当てましょう。
石油は、急速に生産コストが高くなり、見つけるのが難しくなっている唯一の重要な資源ではありません。
実際、石油の話をほぼ正確に反映する、重要な資源の枯渇の事例が多数見られます。
まず、簡単に入手できる高品質なものを追い、その後、次第に扱いにくい、より深い、より希薄なものを探し求めました。
これは人間の本性です。
その一例がこちらです。

この国に初めて来た時、私たちはこの銅の塊のように素晴らしいものをただ転がっているのを見つけました。
やがてそれらはすべてなくなり、次に小さな塊に移り、さらに銅鉱石の最高濃度のものに移りました。
今はどうでしょうか?
今では、ユタ州のビンガムキャニオン鉱山のようなものがあります。

それは幅2.5マイル、深さ3/4マイルで、もともとは山でした。
最終的な鉱石の濃度はわずか0.2%です。
まだ川床に巨大な銅の塊が転がっていたら、私たちは本当にここまでの努力をしたでしょうか?
絶対にありえません。
もっと詳しく見てみましょう。
あそこにあるトラック、見えますか?

それは石油、具体的にはディーゼルで動いています。
もし、そのトラックを動かす燃料がなかったら、鉱石を何で運ぶと思いますか?
ロバですか?
これらのトラックは、一回の運搬で255トンを運びます。
仮に一頭のロバが150ポンド(68キロ)運べるとしたら、どうでしょう?
このトラックは、一回の運搬で3400頭のロバと同じ量を運ぶことになります。
それはかなりの数のロバです。
私がここで言いたいのは、幅が数マイル、深さが3/4マイル(1.2キロ)の穴が、エネルギーの利用を壮観に示しているということです。
再び言いますが、ただの大きな穴や経済的に有利な銅鉱山を見るのではなく、その穴を作るのにどれだけのエネルギーが必要だったかを考えてみてください。
エネルギーが不足し始めると、こうした穴を掘ることが難しくなるため、経済の拡大を支えるために地中から取り出す銅の量も減ると私は思います。
ここで興味深いのは、鉱物や金属を抽出するのに必要なエネルギーとお金の量が、鉱石の品位に依存するという概念です。
鉱石の品位とは、その鉱石中に含まれる目標物質の割合で測定されます。
例えば、10%の銅鉱石は10%の銅と90%の他の物質で構成されています。
もし私たちが目標物質である銅を追求するためにどれだけの他の物質を抽出し、処理しなければならないかをプロットすると、次のようなグラフが得られます。
見覚えがありますか?
あるはずです。
これは非線形のグラフです。

このグラフは、0.2%の銅しか含まれていない鉱石体があれば、1ポンドの銅を抽出するために500ポンドの鉱石を採掘しなければならないことを示しています。
この特定の値を使用したのは、それがビンガムキャニオン鉱山の濃度であるためです。
これにより、この穴がなぜこれほど大きいのかが説明されます。
この巨大なトラックがなければ、これほど低品位の鉱石を採掘することはなかったでしょう。
つまり、エネルギーとコストの面で、私たちはすでにベル曲線の右端にいるのです。
なぜ? 私たちは低品位の鉱石の挑戦が好きだからこれをしているのでしょうか?
いいえ。
既知の他の鉱石体はすでにすべて使い果たしてしまい、これが残された最良の選択肢だからです。
私たちは、工業経済を追求してわずか200年で、すでにより良い品位の鉱石をすべて使い果たしてしまったのです。
ここでの物語は、私たち人類が、地球全体で、すでに最も豊富な鉱石を採掘し、最も簡単なエネルギー源を見つけ、最も肥沃な土壌を耕してしまったということです。
資源の枯渇に関するさらに多くの驚くべき例を挙げることができますが、要点はこれです。

数億年かけて形成された自然の鉱石体、化石エネルギーの堆積、地下水の蓄積、土壌の生成、動物の個体数の成長を、石油が発見されて以来のわずか数年でほぼ使い果たしてしまいました。
人間の観点から言えば、これらがなくなったら、本当になくなります。
努力に対して得られる純エネルギーが減少し、必要な基本的な資源を取り出すのにますます多くのエネルギーが必要になっているとすれば、それでもなお、お金と負債を増やし続けることに意味があるのでしょうか?
お金と負債が、一次および二次的な富と何らかの関係性と比例関係にあるべきだというのは、常識ではないでしょうか?
クラッシュコース 全容
– なぜ、クラッシュコースを日本語に翻訳して公開しようと思ったか?
はじめに
第1章 – 3つの信念
第2章 – 3つのE
第3章 – 指数関数的成長
第4章 – 複利が問題
第5章 – 成長 vs 繁栄
第6章 – お金とは何か?
第7章 – お金の創造:銀行
第8章 – お金の創造:連邦準備銀行
第9章 – アメリカのお金の短い歴史
第10章 – 量的緩和 (QE)
第11章 – インフレ
第12章 – 1兆ドルってどれくらい?
第13章 – 借金
第14章 – 資産と負債
第15章 – 人口動態
第16章 – 貯蓄と投資の国家的な失敗
第17章 – 資産バブルを理解する
第18章 – 曖昧な数字
第19章 – エネルギー経済
第20章 – ピーク・チープ・オイル(安価な石油のピーク)
第21章 – シェールオイル
第22章 – エネルギーと経済
第23章 – 環境 – 枯渇する資源
第24章 – 環境 – 増加する廃棄物
第25章 – 未来の衝撃
第26章 – 私は何をすべきか?
コメント