クラッシュコース Crash Course / 第6章「お金とは何か?」

これはクリス・マーテンソンさんの講義「Crash Course(2014年版)」を安納献さんが翻訳したものです。

※ 経緯はこちら [クラッシュコース日本語訳を、安納献さんの翻訳で公開&アーカイブします]
※ 本文内の太字は、編集・校正をしたテンダーによる可読性を上げるためのもの


クラッシュコース 第6章「お金とは何か?」
目次

お金と呼ばれるものの共通理解を持つ

経済、環境、エネルギーについてのツアーを始める前に、お金と呼ばれるものについて共通の理解を持つ必要があります。

お金は私たちが日常的に非常に親密に関わっているものなので、詳しく注意を払うことがないかもしれません。
そのため、今から数分間このテーマに専念します。


お金は人間が作り出した重要なものであり、もし一晩でお金がすべて消えてしまったら、新しい形のお金が自然に生まれるでしょう。例えば、牛、タバコ、パン、特定の種類のナッツの殻、あるいはオウム貝の貝殻などです。

現在、エアラインマイルやビットコインなどの他の形のお金もあります。
これらは、人々が蓄積し、保存し、その後、紙幣やユーロ、円、ルーブル、人民元と同じように振る舞う無形のものを使って支出する方法です。

お金がなければ、現在の複雑な仕事の専門化は存在しません。なぜなら、物々交換は非常に手間がかかり、制約が多いからです。

さらに重要なのは、各種のお金のシステムにはそれぞれ利点と欠点があるという概念です。
お金のシステムは、ある行動を促進し、他の行動を罰することで、独自の結果を強制します。


お金の持つべき3つの特性

教科書を開くと、お金は三つの特性を持つべきだと書かれています。

お金の特性1つめ 価値の保存手段であるべき

1つめは、お金は価値の保存手段であるべき、というものです。
金や銀は希少で、人間の労力を要し、腐食しないため、この役割を完璧に果たしていました。

対照的に、米ドルは時間とともにほぼ常に価値を失い、これは貯蓄者に罰を与え、投機や投資の必要性を強制します。


お金の特性2つめ 交換手段として受け入れられるべき

二つ目の特性は、お金が交換手段として受け入れられる必要がある、ということです。
つまり、それが人々の間で広く受け入れられ、すべての経済取引の仲介役として機能することです。


お金の特性3つめ 計算単位であるべき

三つ目の特性は、お金が計算単位であるべき、というものです。
つまり、お金は分割可能であり、各単位は等価でなければなりません。
米国の計算単位はドルであり、各ドルは他のドルと同じです。

ダイヤモンドは非常に価値がありますが、各ダイヤモンドが完璧に等価でないし、分割することで価値を失うため、お金としては適していません。つまり、会計単位としては失敗しています。
などなど。


お金とは何か?

では、お金とは本当に何なのでしょうか?

私は非常にシンプルな定義を信じています。
お金とは、人間の労働に対する請求権です。

あなたが「お金を使おう」と考えるほぼすべてのものは、人間の労働が関与しています。その労働が過去に行われたものであれ、未来に行われるものであれ、お金は労働に対する請求権です。

この概念は重要であり、特に債務に関して後ほど詳しく説明します。


不換通貨 = フィアットマネー

先ほどのお見せした一連の写真からわかるように、文字通り何でもお金と見なすことができます。牛、パン、貝殻、タバコなどです。
しかし、米ドルのような現代の通貨は、フィアットマネー(不換通貨)と呼ばれるタイプのお金の一例です。

フィアットとはラテン語で「それを行うように」という意味で、不換通貨は政府が価値があると定めることによって価値を持ちます。


米ドルとは何か?

ここで重要な質問に移ります。米ドルとは一体何なのでしょうか?

かつて、ドルは既知の重さの銀や金によって裏付けられていました。
この例では、ドルは米国財務省から直接発行され、要求に応じて一定量の銀を支払うものでした。しかし、それは1930年代のことで、そんな時代は遠い昔のことです。


現在、ドルは連邦準備制度の負債です

連邦準備制度理事会(FRB)は米国のマネーサプライを管理するために、1913年の連邦準備制度法によって認可された民間の団体です。

現代のドル札に、保有者に何かを提供する権利を示す言葉がないのは、それがもはや何も具体的な「モノ」によって裏付けられていないからです。

むしろ、ドルの価値は次の言葉に由来します。
すなわち、支払いに対してドルを拒否することが違法であり、税金の支払いに唯一受け入れられる手形であるという事実です。


インフレーションは通貨単位を破壊する

国家のマネーサプライを慎重に管理することは非常に重要です。
そうでなければ、インフレーションによって通貨単位が破壊される可能性があります
実際、過去には存在しなくなった紙幣の例が3,800以上あります。

米国には、コレクター価値はあるかもしれないが、もはや貨幣価値のない「グリーンバック」のような多くの例があります。

もちろん、同じように美しいけれども機能しなくなった例をアルゼンチン、ボリビア、コロンビア、その他数百の場所からも、私は簡単に挙げることができます。


ハイパーインフレーション ユーゴスラビアの例

ハイパーインフレーションによる通貨の破壊はどのように起こるのでしょうか?

ここに、1988年から1995年の間のユーゴスラビアの比較的新しい例があります。

1990年以前は、ユーゴスラビア・ディナールには測定可能な価値があり、実際に何かを買うことができました。しかし、1980年代を通じて、ユーゴスラビア政府は恒常的な予算赤字を抱え、その不足分を補うためにお金を印刷しました。これに心当たりがありますか?

1990年代初頭までに、政府は自国のハードカレンシー(※信頼されている安定した通貨)の備蓄を使い果たし、市民の私的口座を略奪しました。
物事を進めるために、次第に大きな紙幣を印刷しなければならなくなり、最終的には5000億ディナール紙幣の発行という驚異的な事例を作るに至りました。

ユーゴスラビアのインフレーションはピーク時に日々37%以上で進行しました。これは、価格が約48時間ごとに倍になることを意味します。これをより具体的に説明しましょう。


例えば、2007年1月1日に1セント持っていて、それで何かを買うことができたとします。
日々37%のインフレーションだとすると、2007年4月3日には同じアイテムを購入するために10億ドル紙幣が必要になります。

逆に、もし2007年1月1日にスーツケースに詰めた10億ドルがあったとしても、4月3日までにはその購買力は1セント相当に減少します。
明らかに、この期間中にお金を貯めようとすると、すべてを失ってしまいます。

したがって、インフレーションの通貨体制は貯蓄者に罰を与えるということができます。

反対に、インフレーションの通貨体制は支出を促し、お金を投資や投機に回すことを要求します

そうしなければ、少なくともインフレーションに追いつく可能性すらありません。

もちろん、投資や投機にはリスクが伴います。したがって、インフレーションの通貨体制は、その中に住む市民が一生懸命稼いだ貯蓄をリスクにさらすことを要求するという主張を広げることができます。

これについて少し考えてみてください。


お金を作り出す

さらに重要なのは、歴史は「一般的に、通貨の管理がいかに失敗するか」を示しているので、私たちのお金の管理者が何もないところからお金を過剰に作り出していないか

貯蓄、文化、制度、政治システムをインフレーションの過程によって破壊していないかを注意深く監視する必要があるということです。

ちょっと待ってください。

私は「何もないところからお金を作り出す」と言いましたか?

そうです。言いました。

これはあなたの、私の、我々の未来にとって非常に重要なプロセスなので、次の二つのセクションでお金がどのように作られるかを学びます。

準備ができたら、次のセクションに進んでください。

第7章「お金の創造:銀行にご参加ください。

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クラッシュコース 全容

– なぜ、クラッシュコースを日本語に翻訳して公開しようと思ったか?

はじめに
第1章 – 3つの信念
第2章 – 3つE
第3章 – 指数関数的成長
第4章 – 複利が問題
第5章 – 成長 vs 繁栄
第6章 – お金とは何か?
第7章 – お金の創造:銀行
第8章 – お金の創造:連邦準備銀行
第9章 – アメリカのお金の短い歴史
第10章 – 量的緩和 (QE)
第11章 – インフレ
第12章 – 1兆ドルってどれくらい?
第13章 – 借金
第14章 – 資産と負債
第15章 – 人口動態
第16章 – 貯蓄と投資の国家的な失敗
第17章 – 資産バブルを理解する
第18章 – 曖昧な数字
第19章 – エネルギー経済
第20章 – 安いオイルのピーク
第21章 – シェールオイル
第22章 – エネルギーと経済
第23章 – 環境 – 枯渇する資源
第24章 – 環境 – 増加する廃棄物
第25章 – 未来の衝撃
第26章 – 私は何をすべきか?

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この記事を書いた人

考えて、作り、実践して、伝える作業を繰り返しています。 版元を作り出版した著書「わがや電力」は直販にて15000部を売上げ。 先住民技術、NVCとシステム思考、環境再生技術の知恵を使い、生態系を模倣する文明を研究中。鹿児島の廃保育園にて環境問題を解決するための工房・ダイナミックラボを運営

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