クラッシュコース Crash Course / 第8章「お金の創造:連邦準備銀行」

これはクリス・マーテンソンさんの講義「Crash Course(2014年版)」を安納献さんが翻訳したものです。

※ 経緯はこちら [クラッシュコース日本語訳を、安納献さんの翻訳で公開&アーカイブします]
※ 本文内の太字は、編集・校正をしたテンダーによる可読性を上げるためのもの


クラッシュコース 第8章「お金の創造:連邦準備銀行」
目次

お金はどのように生み出されるか?

さて、これからお金が実際にどのように作られるのかを発見するために、源流に向かいます。
そのプロセスは次のように進みます。

1. 議会がお金を必要とする

例えば、議会が現在持っている以上のお金を必要としているとします。

ちょっと無理があるかもしれませんが、例えば税金を減らしながら同時に二つの戦争を行うという歴史的に愚かなことをしているとしましょう(校正者注 2014年当時、アメリカはイラクとシリアへの軍事介入を行なった)

実際、議会にはお金がないので、追加の支出の要求は財務省に渡されます

2. 財務省に支出要請が届き、財務省は国債を発行する

財務省の運営はそもそも「その日暮らし」で、2週間分以上の現金が手元にない状態だと知ると、あなたは驚くかもしれませんし、落胆するかもしれませんし、そのどちらでもないかもしれません。

財務省は現金を調達するために、米国政府が借金する手段である国債を発行します

国債には常に額面価値があり、購入者に支払われる利率が示されています。

例えば、額面価値が100ドルで、利率が5%の国債を購入した場合、その国債に100ドルを支払い、1年後には105ドルを受け取ることになります。

国債は定期的にオークションで売られ、大部分は大手銀行や中国や日本などの主権国家によって購入されます

3. 国債が買われ、そのお金が財務省の金庫に入り、政府に分配される

国債を購入するために払われたお金は財務省の金庫に送られ、通常の政府プログラムに分配されます。

ここまでの説明では、お金がどのようにして最初に生まれるかをまだ示していませんね。
国債はすでに存在するお金で購入されています。

では、お金はどこから来るのでしょうか?

お金は必要に応じて創造される

お金は、連邦準備銀行が銀行から国債を購入する次のメカニズムによって作られます

いわゆる「量的緩和」や「QE」プログラムについて疑問を持っているなら、次の部分がそれを説明します。

連邦準備銀行が、銀行やその他の金融機関から国債を購入する際、
購入に必要な金額を他の銀行に振り込み、その代わりに国債を手に入れます。

それだけです。国債とお金が交換されるのです。
連邦準備銀行が「そのお金」をどこから手に入れるのか気になりますか?

そのお金は、文字通り空気から生まれます。
連邦準備銀行は国債を購入する際にお金を作り出す
のです。

この新しく作られた連邦準備銀行のお金は、常に債務証書と交換されます。例えば国債、住宅ローン担保証券(MBS)、場合によっては企業債務などです。

All dollars are loaned into existence. = すべてのドルは貸し出されることで現れる

これでこのスライドにタイトルがつけられるでしょう。

信じられないですか?

ここに連邦準備銀行の出版物「Putting It Simply(=簡単に言えば)」からの引用があります。

「あなたや私が小切手を書く場合、その小切手を担保するための十分な資金が口座に必要です。
しかし、連邦準備銀行が小切手を書く場合、その小切手は銀行預金に基づいていません。
連邦準備銀行が小切手を書くとき、お金を創造しているのです」

– In “putting It SImply,” Boston Federal Reserve

これは尋常ならざる力です。

あなたや私はお金を得るために働き、それを増やすには市場でお金をリスクに晒す必要がありますが、連邦準備銀行は好きな時に好きなだけお金を印刷し、米国政府を通じて利息をつけて私たちに貸し出すだけです

3,800以上の紙幣といくつかの金属貨幣が管理不行き届きのために無価値になった事実を考えると、連邦準備銀行が我々の通貨単位を責任を持って管理しているかどうかを厳密に監視するのは理にかなっています。

彼らが過剰にお金を印刷している場合はどうでしょうか?
このような尋常ならざる力があるため、彼らが何をしているのかを注意深く見るべきです。


お金には2種類ある

さて、これで2種類のお金があることがわかりました。

Fractional reserve banking = 部分準備銀行制度

1つ目は銀行信用(=銀行がお金を貸し出すこと)で、これまでで見たように「存在するために貸し出されるお金」です。銀行信用は、それに関連する負債と同額で相殺されるタイプのお金です(=信用創造)。
利息を支払わなければならない負債。

2つ目のお金は今回見てきた、空気から生まれるものです。

お金が作られるプロセスは非常に単純で、頭が拒絶反応を起こすほどですので、この章を何度も見直す必要があるかもしれません。
ある人はこのセクションを4回以上見直して初めて理解し始めたと言っています。

しかし、これをすべて理解し、把握できたなら、おめでとうございます!
自分を褒めてください。簡単ではありませんから。


3つめと4つめのキーコンセプト

これらの貨幣学習によって、非常に重要な3つめと4つめのキーコンセプトを形成することができます。

地域銀行レベルでは、すべての新しいお金は存在するために貸し出されます
連邦準備制度レベルではお金は単に空気から製造され、それが主に利息を支払う政府債務と交換されます。

どちらの場合でも、お金は負債によって裏付けられています。利息を払う負債。

このキーコンセプトから、真に深遠な言葉を公式化することができます。

「最低でも毎年、お金を貸し出すことにより新しいお金を生み出して、それによって過去のすべての未払いの負債の利息支払いをカバーする必要がある

ということです。

これを少し言い変えると
「毎年すべての未払いの負債は、少なくともその債務にかかる利息の割合だけ複利で成長しなければならない」と言えます。

毎年、一定の割合で成長しなければなりません。

負債ベースの貨幣システムは時間と共に一定の割合で成長するように設計されているため、それは設計上、指数関数的なシステムです。

これから導かれるのが3つめのキーコンセプトです。
それは、システム内の「負債の量」は常にシステム内の「お金の量」を超えるということです。


always more debt than money. = 常にお金よりも借金の方が多い

システム内の負債の量が常にお金の量を上回り、負債の利息を支払うためのお金も貸し出されなければならない場合、それも少しの間は考えるに値します。

ここでこのシステムが良いか悪いかを判断するのは私の役割ではありません。
ただこれが現実です。

この設計を理解することで、私たちは経済の将来の可能性が無限ではなく、システムのルールによって制約されていることをよりよく理解できるようになります。

このシステムは、最低でも未払いの負債の利率で成長するように設計されているのです。

つまり、私たちの貨幣システムは指数関数的に拡大するように設計されています
これは私たちの貨幣システムの特徴です。

これが良いことか悪いことかを私たちがどう思ったところで、ただ単純にこのシステムがこう設計されているという事実は変わりません。


これら全てが第4のキーコンセプトにつながります。
それは、永続的な拡大が現代の銀行の要件であるということです。

法律上の要件ではなく、システム上の要件です。あなたの体がシステムとして酸素を必要とするように。

実はルールを作ることができます。
連鎖的な崩壊を避けるために、毎年、全ての未払い利息分と同じくらいの新しい信用や融資を行う必要があります。

お金の供給が継続的に拡大しなければ、過去の負債は返すことができず、デフォルト(債務不履行)が波及してシステム全体を破壊する可能性があります。

前章の地域銀行の例で見たように、デフォルトは負債ベースの貨幣システムのアキレス腱です。

このため、私たちの社会のすべての機関と政治的な力は、この特定の結果を避けるために向けられています

したがって、銀行システムは継続的に拡大しなければならず、それが正しいか間違っているか、または法律で要求されているかどうかではなく、単にそのように設計されたからです。

継続的な拡大はシステム(校正者注 連鎖的に変化するひとかたまりの構造体、という意味)の特徴であり、私の車のエンジンがガソリンを使用する特徴を持っているのと同じです。

私が車が藁や水で動くことを望んだり期待したりしても、時間の無駄です。それは単にそう設計されていないからです。


継続的な拡大の要件を理解することで、それが実際に可能かどうかを評価する立場に立つことができ、それが不可能だと考えるならば、次に何が起こるかを想像する自由があります。

私は個人的に、指数関数的に永遠に拡大し続けなければならないが、最終的には有限な地球の資源を要求するシステムの長期的な実行可能性に疑問を持っています。

したがって、問題とは次のとおり。
設計上、拡大し続ける必要がある貨幣システムが、限られた資源しか持たない球形の惑星の物理的な制限に直面するとどうなるのでしょうか?

いつの日か、遅かれ早かれ、私たちの貨幣経済モデルは物理的現実と衝突するでしょう。


もう一つ私が持っている信念は、この衝突を私は生涯のうちに目撃するだろう、ということです。
実際にそれはすでに始まっており、私はこの結果を非常に興味深く見守っています。

これは確かに巨大な命題であり、人によっては興味深いどころか恐ろしいと感じる人もいるでしょう。
もし未来が過去と同じようになることを望むなら、それは確かに恐ろしいことです。

未来に対して柔軟な視点を持つならば、実際にどのような未来が訪れても、その未来を最大限に活用する機会があります。

これらは魅力的で活気に満ちた、真に前例のない時代であり、私は今、ここで、あなたと一緒に生きていることを非常に嬉しく思っています。

次のセクションでは、私たちの貨幣システムについての非常に重要な歴史的背景を見ていきます。
そこで、私たちの貨幣システムは洗練された進化の傑作と見なすことができるか、または40年以上続いている歴史的に短命な実験と見なすことができるかを学びます。

これがどれほど注目すべきものであるかをよりよく理解するために、どうぞ 第9章、「アメリカのお金の短い歴史にお付き合いください。

ご清聴ありがとうございました。

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クラッシュコース 全容

– なぜ、クラッシュコースを日本語に翻訳して公開しようと思ったか?

はじめに
第1章 – 3つの信念
第2章 – 3つE
第3章 – 指数関数的成長
第4章 – 複利が問題
第5章 – 成長 vs 繁栄
第6章 – お金とは何か?
第7章 – お金の創造:銀行
第8章 – お金の創造:連邦準備銀行
第9章 – アメリカのお金の短い歴史
第10章 – 量的緩和 (QE)
第11章 – インフレ
第12章 – 1兆ドルってどれくらい?
第13章 – 借金
第14章 – 資産と負債
第15章 – 人口動態
第16章 – 貯蓄と投資の国家的な失敗
第17章 – 資産バブルを理解する
第18章 – 曖昧な数字
第19章 – エネルギー経済
第20章 – 安いオイルのピーク
第21章 – シェールオイル
第22章 – エネルギーと経済
第23章 – 環境 – 枯渇する資源
第24章 – 環境 – 増加する廃棄物
第25章 – 未来の衝撃
第26章 – 私は何をすべきか?

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この記事を書いた人

考えて、作り、実践して、伝える作業を繰り返しています。 版元を作り出版した著書「わがや電力」は直販にて15000部を売上げ。 先住民技術、NVCとシステム思考、環境再生技術の知恵を使い、生態系を模倣する文明を研究中。鹿児島の廃保育園にて環境問題を解決するための工房・ダイナミックラボを運営

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