・その2 Environmental Activist Tender, Part 2: Introducing His Ideas for the Future このシリーズはウェブでも向こう1年(つまり2020.7/30まで)は聞くことができるのですが、この回は好評だったということもあり、なんと2019年末の12/26,27に全世界で再放送が決まりました! まあ、全世界と言いながら、 日本語以外の放送だけどね!(半べそ) 日本では、NHKラジオ第2で14:15から聞くことができる模様です。
目次
半べそのキミへ。有志の方による日本語訳×2日分!
おっと!Google翻訳を起動するのはまだ早いぜ! なんと有志の方が、日本語訳を作ってくださいました。
環境活動家テンダー パート1「技術とクリエイティビティが解決の鍵」
今日と明日は2回連続で、ユニークなアプローチで環境活動に取り組んでいるテンダーこと小崎悠太さんを紹介します。テンダーという呼び名は、小崎さんが以前バーテンダーをしていたことに由来します。 テンダーさんは、汚染やエネルギー、ゴミなどさまざまな環境問題を、既存の枠組みに縛られず、技術を身につけクリエイティビティを発揮することで解決しようと提案しています。その方法は、火起こしから3Dプリンターまで多岐にわたります。 パート1では、テンダーさんがなぜ技術とクリエイティビティを重視するのか、ここに至るまでにどのような経験をしてきたのかご紹介します。■
<♫キンコンカンコーン←学校のチャイムの音> ここは日本の南西に位置する鹿児島県、南さつま市にある私立高校です。今年の4月から「サバイバル理科」という授業が週に1回行われています。 ゲスト講師はテンダーさん。実用的で、かつ環境を傷つけないさまざまな技術を、その根拠となる理科の知識とともに教えています。 この日は、重い机をどうやって持ちあげるかを例に、「てこ」の原理を説明していました。 テンダー「持ちあげてみて。うん。はい。これが、オレがこのあいだ買ってきたバール。リピートアフターミー! バール。(生徒たち「バール」) 『犯人はバールのようなものでドアをこじあけた』ってニュースで言ったりするよね」 てこの原理を応用すれば、一人でも重いものを持ちあげることができます。電気やガソリンを使う重機が必要ないので環境にも優しいのです。 そして今度は、テンダーさんから、てこの原理を腕ずもうに応用してみようという課題が出されました。 テンダー「腕ずもうって筋肉で決まると思うじゃん。オレずっとそう思ってたんだけど。大人になって、今ね、オレは理解したよ。クリエイティビティが足りなかった。リピートアフターミー! クリエイティビティ!」 テンダー「はいっ。レディー、ゴーッ! よっ! よっ!」
<生徒歓声> 生徒たちはグループに分かれ、手と肘の位置を変えながらどうやったら力を最大化できるか話しあいました。テンダーさんの実践的で役に立つ授業は、高校生たちにも好評です。 男子高校生「楽しいです、はい。普通の授業って、それこそぼく数学が苦手で、これっていつか使えるのかなって感じで聞いてたんですけどー。サバイバル理科は毎日の生活に関係することばかりでおもしろいです」 女子高校生「なんか、今まではすべて座学。学んで理解しても、それを活用する場がなかったんですよ。で、その活用することがないことに不満をもつことさえなくて。でも、このサバイバル理科の授業を受けて、学んだことをどうやって自分の生活にいかそうかなと考えるようになりました」 テンダーさんは、ロジックを用いて問題を解決することが重要だと言います。腕ずもうもその一つ。腕っぷしの強さだけでは勝てないのです。 先入観にとらわれるのは危険だとテンダーさんは考えています。 テンダー「すごく大事なことは、リアリティに基づいて世界を認識する必要があるってこと。そうじゃなくて、自分が見たいように世界を見続けてしまうと、間違ったモデルを間違った方法で解決しようとしちゃう。高校生たちには、覚めててほしいですよね。大人がどう言うかってこととは別に、目の前で物ごとがどうやって起こっているか、そこにどんな原理原則が働いているのか理解してほしい。要するに、従順にならないということ」 テンダーさんは、日本でもっともアクティブな環境活動家の一人で、毎年多くのワークショップやレクチャーを行なっています。火おこしや住宅用太陽光発電からプラごみ(プラスティックごみ)を使った工芸品づくりまで、さまざまなことに取り組んでいます。そのどれもが、クリエイティブで実用的。環境分野の関係者だけでなく、地方自治体や学校、企業など幅広い分野の人たちが彼の活動に注目しています。
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テンダーさんは1983年に、東京に近い大都市、横浜で生まれました。お父さんは原子炉の設計・管理の仕事をしていました。お父さんから原子力は素晴らしい次世代エネルギーだという話を聞いて育ったテンダーさん。お父さんのことばを信じていたそうです。 ところが、22歳のとき、放射性廃棄物の処分場をめぐって、環境や健康を害する恐れがあると反対運動が起きていることを知り、自分はどういうお金で育ってきたのかと疑問をもつようになりました。 そういう思いを抱きながら、翌年、六ケ所村に移り住みます。日本の北部、青森県にある六ケ所村には、複数の核関連施設があります。テンダーさんは、農家にホームステイしながら反原発運動に熱心に関わるようになっていきました。 しかし、原発推進派と反対派の激しい対立を目の当たりにするうち、反原発運動で問題を解決するのには限界があると悟ります。 テンダー「六ケ所村で、商工会の若頭、たぶんゆくゆく村長になるでしょみたいな人と、押し問答をしたことがあって。こんだけ危ないっていう研究結果が出てるでしょって言っても、彼は否定し続けた。2時間くらい話して、最後に、彼が、『あんたらが言ってるのは命の理屈だ。おれらが言ってるのは経済の理屈だ。それだけだ』と言って泣いたんですよ。そのときまでその人はオレのなかでは敵だったんだけど、ああ、わかって受け入れてるんだって思って。やむを得ない。それは、青森が僻地だし、貧しいし、国が約束したからだって。青森をエネルギー立県にして豊かにするって言われたから引き受けた。それを、あんたらは命を犠牲にする選択をしてるんじゃないかって、よそから来た23歳に言われる哀しみたるや。ほんとにひどいことをオレはしたと思ってる。相手の世界観を理解していないのに、それを否定するのはちょっと違うなって。原発に賛成してるとか反対してるとかじゃなくて、まず相手がしていることを知ろうと決めた。それから、電気のことを勉強し始めた」 テンダーさんは、社会運動以外の方法を模索し始めます。図書館やインターネットで大量の資料を読み、環境にやさしい技術に関する古今東西の情報を集めました。そして、調べたことを実際にやりながら検証していきました。 そして、小規模の自家発電なら、それほどコストがかからず、ごく基本的な知識でつくれるということを発見します。そのノウハウをまとめたのが『わがや電力』という本です。わがや電力は、直訳では”my home power”という意味で、英語のタイトルは”Natural Power Plants: How to Charge Beyond The Grid”。4年間で1万部を売り上げました。
<コッケコッコー> テンダーさんは、この本に書いてあることを日常生活で実践しています。テンダーさんは山あいにある古い家で妻と3人の子どもたちと暮らしています。家賃は1年間で1万円(100ドル未満)。日本のほとんどの地域の不動産は高いので、この家賃は非常に安い。ただも同然です。 テンダーさんの家は、ぱっと見ただけでは、ほかの家となんら変わりがありません。でも、実は、電気も、水も、ガスも契約していないのです。 <シュッ、シュッ、シュッ(洗濯の音)> テンダーさんの家では、赤ちゃんのおむつなど汚れのひどいものを手洗いしたあと、二槽式洗濯機を使って洗濯をしています。 水は裏山の伏流水を濾過し、タンクに貯水して、台所や風呂場に引いています。電力は太陽光自家発電でまかなっています。蓄電量に限りがあるため、洗濯のタイミングは天気を見て決めています。 照明やコンピュータも太陽光発電。冷蔵庫は、1日に2時間だけスイッチを入れて冷温を保つようにしています。テンダーさん一家は電力の使用を最小限にしようとしているのです。お風呂のお湯は太陽光と薪で沸かし、料理も薪の火をつかっています。 日本は全国すみずみまで送電網が張り巡らされ上下水道が敷設されています。テンダーさんのような暮らしをしている人は極少数ですが、みんなが少しずつ工夫することで状況が変わっていくとテンダーさんは信じています。そのために、技術とクリエイティビティをつかって一つずつノウハウを確立していくこと。それがテンダーさんの考える解決方法です。 テンダー「結局、今の世の中をみたときに、どんなに高尚な教えとか思想も、テクノロジーの便利さと便利さに伴う依存の前に力を失っていくなかで、自分たちがテクノロジーをつかった新しい価値基準というものを提案できなかったら、便利さには打ち勝てない。そうじゃなくて、今テクノロジーの便利さが100%だとしたら、それの便利さを70%に抑えることで環境への害も減らすことができると思う。むしろ、生態系をよくしていく技術だって創っていける。それは可能なはず。そういう技術を確立して次の世代に引き渡していくのが自分の仕事だと思っています」 2017年、テンダーさんは新しい取り組みを始めました。彼の考えやアイディアを社会と共有できる拠点をつくったのです。廃校となった小学校を利用したダイナミックラボという名前の市民工房で、誰でも利用できます。 ダイナミックラボでは、廃材や廃物の再利用や生態系を豊かにする新しい技術の開発などのワークショップを開催しています。明日の番組では、ラボで開発している新しい技術をいくつか紹介します。ぜひご視聴ください!
環境活動家テンダーさん パート2「未来に向けてのアイディアや技術」
昨日に引き続き、独自の方法で環境活動に取り組むテンダーこと小崎悠太さんを取りあげます。小崎さんは、以前バーテンダーをしていたことからテンダーと呼ばれています。 テンダーさんは、既存の枠組みにとらわれず、技術を身につけ、クリエイティビティを発揮することでさまざまな環境問題を解決しようと提案しています。その方法論は、火起こしから3Dプリンターまで多岐に渡ります。 2日めの今日は、テンダーさんが実践し、提唱しているさまざまな技術の一部をご紹介します。<♫ 尺八の音色> 日本情緒あふれる美しい音色が流れてきました。演奏しているのはテンダーさん。楽器はテンダーさんが発明したものです。 テンダー「海外の日本っぽいイメージにしてみた! 笑。番組の冒頭でつかみにつかってください!」 この楽器は、学校で習うリコーダーを改造したもので、リコーダーの口を当てる部分(マウスピース)をつけ替えるだけで和楽器に変身します。指の運びは変わらないのに、音色はすっかり和風です。 この楽器づくりに使われた技術が、今日紹介するテンダーさん一押しの技術の一つ目です。 これは3Dプリンターです。箱型で、両腕で抱えられるほどの大きさです。つくりたいものの縦横高さの寸法をデータ入力するだけで、仕様通りのものができあがります。 <♫ピッピピピピッピッピ〜 ブォーーッ ←3Dプリンターの音> 3Dプリンターがあれば、大量生産に依存せずに必要なものだけをつくれます。ものが壊れても捨てずに、壊れた部分を修理してまた使うことができるようになります。 同じく3Dプリンターを使ってつくった物のもう一つの例はアルミ缶カッター。ジュースやビールの空き缶をカットする道具です。アルミ缶カッターを使って、アルミニウムをきれいな長方形の板状にカットすると再生利用が可能になります。ふつうは熱で溶かしてからリサイクルされるのですが、アルミ缶カッターがあればエネルギーを使わずにすむのです。 クリエイティブなマインドと3Dプリンターがあれば、環境にダメージを与えない道具をつくりだすこともできるんですね。こういう知恵を世界中の人と共有できるのも画期的なことだとテンダーさんは言います。アイディア満載のさまざまなツールの3Dデータがウェブ上で公開されていて、だれでも利用できるのです。こういった動きが競争原理をこえた新しい価値を生んでいるとテンダーさんは考えています。 テンダー「資本主義社会っていうのは、設計図とかノウハウっていうものを隠すことによって権利をパワー化する世界。多くの人たちがその秘密情報を知り得ない。その希少性が価値をもたらす仕組みになってる。一方で、オープンソースの世界では、設計図が公開されていて、だれでもアクセスできるし、無料で利用できる。だから、みんなで使って、知恵を出し合いながら改良していけるんです。3Dプリンターにはもうひとついいところがあります。世界の石油の65%は輸送に使われてるんですけど、3Dプリンターはその仕組みすら変えられる。世界の離れたところに住む人どうしが、データをアップロードしたりダウンロードしたりするだけで、情報の受け渡しができて、自分がいる場所で製品をつくることができるんです」
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鹿児島県南さつま市の山あいの地区に家族5人で住むテンダーさんは、電気も水道もガスも契約せずに暮らしています。山水を引き、太陽光発電で電力をまかなっています。 日本ではほとんどの人が、電気や下水道など、非常に複雑に張り巡らされ、管理されたインフラに頼って生活しています。しかし、テンダーさんはそういうシステムに依存せず、次世代に豊かな生態系を残すために、個人でも実践できる技術をなんとか確立しようとしています。 2017年には廃校となった小学校にダイナミックラボという市民工房をオープンさせ、現在、そこを拠点にワークショップを開催したり、技術の開発や発信・普及活動を行っています。 テンダーさんは、古くから生態系と共存してきた技術にも注目しています。
そのひとつ、火起こしの技術をご紹介しましょう。 電気やガスにくらべれば、木を燃やして火や熱を得るほうがはるかに自然破壊の度合いが低いとテンダーさんは指摘します。 テンダー「火起こしは、少なくとも今まで3万年間は伝承されてきてて。オレが知ってるという時点で、3万年間は地球を壊さなかった技術なわけじゃないですか。それが答え。今まで存在し続けてきたという事実、そこに答えがある。過去に答えを求めるべき。」 <ゴシゴシゴシ……←板に枝をたててこする音> さて、テンダーさんはどうやって火を起こしているのでしょうか。乾いた木の板に小枝を立て、手で挟んで素早く回転させます。小さな火種が出てきたらそれを枯れ草など燃えやすいものの上にのせます。 <フーーーーッ、フーーーッ。 ボッ←息を吹きかける音、炎のあがる音> そこに息を吹きかけることで酸素が送り込まれます。開始から3分で炎があがり、火起こしが完了しました。 テンダーさんは、火起こしの方法をアメリカの先住民の技術を教える学校で学びました。火起こし以外にも、ロープのより方、石器のつくり方、水の採集方法など、50種類の技術を学んで日本に戻り、その技術を自分のものにするために毎日繰り返し練習したそうです。 現代に生きるわたしたちは、さまざまな便利なものに囲まれて生活していますが、そういうものの仕組みや由来をわかっていません。だからこそ、火起こしのような技術を学ぶ利点がたくさんあるとテンダーさんは考えています。 テンダー「自然現象からリアリティを知り、身につけるきっかけになること。体力も有限だし。風が吹いているのか、雨が降っているのか、湿度が高いのか、地面が濡れているのかなど、自然現象を観察し、ものごとの関係性を知り、自分たちの有限性を知り、技術を身につけて、はじめて火を起こすことができる。自分たちの目の前で起きている自然現象の一つひとつにはそれを引き起こす仕組みがある。それがリアリティです。リアリティを身につけることは自信にもつながります。地表にあるものを使って火を起こすことができれば、凍死することはないし、自分の周りにいる人は寒い思いをせずにすむ。なんて言ったらいいかな。保証にも、保険にもなるってこと。
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最後に、テンダーさんがいま取り組んでいる、プラごみの再利用技術をご紹介します。 インターネットで共有されていた設計図を参考に、マシーン(インジェクションマシン / 射出成形機)をつくったそうです。細かく破砕したプラスティックをこのマシーンに注ぎ込むと、高温で溶かされた後、金型に流し込まれ、成形されます(射出成形)。これまでに、椅子の座面やかごなどさまざまな製品を試作しました。そのうち、コースターは商品化もされています。社会的課題の解決にさらにつなげようと、台風に強い住宅用の角材も完成させました。 テンダー「そもそもやりたかったことは、ゴミを拾ってきたらお金がもうかる仕組みをつくること。お金は生まれながらに(決められた)距離があるけど、ゴミってだれもがアクセスできる。誰だって材料を手に入れられるとわかれば、まちからゴミも減るし、お金も稼げる。いいことづくしです。それに、地面を掘りかえさなくてもすむし」 しかし、課題も見つかりました。角材をつくるには大量のプラごみが必要です。離れた場所から運ぼうとすると、結局エネルギーを使ってしまうことになります。それでは本末転倒です。テンダーさんは、一つずつの行為がなににつながるか、一歩ひいて冷静に見極めようとしています。 テンダー「先住民技術のなかには、オレが知る限り二つ、ない技術があるんですよ。核のごみの処分の方法とプラごみの処分方法。この二つは、昔は存在しなかったものなので、今を生きる自分たちが、先住民の人たちが編み出したような持続可能な技術を確立できなかったら、永久にそういう技術はもてないってことです。要するに、100年後、200年後、1000年後の人びとに向けて、『先住民』として、プラスティックを処理する技術を確立する必要がある」 世界中にたくさんある未解決の環境問題を、人と人とをつなぎ、みんなの叡智をかけあわせることで解決したい。テンダーさんは、そう願っています。 テンダー「人間って、自然が元のサイクルに戻る時間を10倍速めることができるなと思っていて。待ってたら森が育つのに1000年かかるところを、人間は100年で大きな森をつくれる。ひどく破壊されてしまった自然環境を、驚くべき速さで回復させることができるはずです。それって人間の役割だし、人間だからできること。それができだら、人間は生態系の一部になれると思う」 2回にわたって、技術を用いることで環境問題を解決しようとしている環境活動家のテンダーさん(小崎悠太さん)の取り組みを紹介してきました。 番組で取り上げたものも含めさまざまな技術を、テンダーさんの工房で学ぶことができます。英語のウェブサイトもあります。”Dynamic Lab Japan”で検索してみてください。宿泊施設もあります。海外の方にもぜひ訪ねてほしいそうです!
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テンダー「結局、今の世の中をみたときに、どんなに高尚な教えとか思想も、テクノロジーの便利さと便利さに伴う依存の前に力を失っていくなかで、自分たちがテクノロジーをつかった新しい価値基準というものを提案できなかったら、便利さには打ち勝てない。そうじゃなくて、今テクノロジーの便利さが10だとしたら、それを7割の便利さに抑えることで環境への害も減らすことができると思う。むしろ、生態系をよくしていく技術だって創っていける。それは可能なはず。そういう技術を確立して次の世代に引き渡していくのが自分の仕事だと思っています」賛成
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