ヤマハ製電動アシスト自転車をどんなバッテリーでも使えるように拡張する

どうもこんにちは。テンダーです。

はてさて、前から思ってのだけど、電動アシスト自転車のバッテリーって…高いよね?

高いよね??

[↑ こういうの]

衝撃が加わったり、耐候性が求められたり、かつ小型軽量が求められるうえに安全性が最優先というリチウムバッテリーだから高いのもまあしゃあないとも思うんだけど、2年の寿命で4〜5万円と言われちゃうと、もうちょっとどうにかならんものか、と思ってしまうのもまた人情。軽自動車の車検と大差ないじゃん。

というわけで、バッテリーどうにかならないか問題を解決すべく、海外での取り組みを調べること数日。。。


最初は「どうせ電圧が合ってるバッテリー繋いじゃえばいいんでしょ?」 くらいに思ってたんだけど、なんともはや、ヤマハとパナソニックのアシスト自転車は、内蔵コンピューターがバッテリーを純正かどうか監視している!ということが判明

(純正じゃないとエラーを返して、アシスト機能を使わせないように作ってある。
かたやジャイアント社の自転車は監視していないのでどんなバッテリーも使えるが、人気もあって高価!)

じゃあその「チェック機能になんとか介入しないとどうしようもないじゃん!」という切り口で調べると、やっぱりおりました、先人!

どどん。

こちらのgamerpaddyさんがすでにヤマハのものはハック済み! しかもやり方まで公開してくれておりました。

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このハックは、コンピューターがバッテリーとやりとりして純正かどうかチェックしてるところに割り込んで、誤認させるものらしい。

さらに調べると、この gamerpaddyさんのコードを基盤に落とし込んだドングルを Albert van Dalenさんが販売していて、日本からも買えることがわかったので、今回は確実性を求めてAlbertさんから購入することに。

$89これを高いと思うか安いと思うかはキミ次第!

髭を長くして待つこと2週間。
とうとうドングルが到着。早速実装だ!

目次

電動アシスト自転車のバッテリーを非純正化するためにいるもの一覧

電動アシスト自転車本体

今回の改造の人柱?となった自転車は、丸石サイクルのフラッカーアシストちゃん(FRA63H:2012年11月発売モデル)。

むむ、ヤマハじゃないじゃん! とお思いのご諸兄。これは実は、中身はヤマハ製でOEM商品なのです(2011 ヤマハ・リトルモアと同じ。ついでに言うとブリヂストンの自転車もヤマハ製)。

だからモーター部分にはしっかり「YAMAHA」と書いてありますぜ。

この自転車は、友人が「なんか壊れてるみたいだから…あげる!」とのことで、「きっとバッテリー不具合だろうなー」くらいの軽い気持ちでもらったもの。そしてこの早合点が全ての元凶(散財)のもとであった・・・。(詳しくはOIOI)

非純正バッテリー

肝心要の純正じゃないバッテリーは、Anker 521 Portable Power Stationを選定。

こちら、Whあたりの価格はヤマハ純正のバッテリーと大差ないんだけど、

[走り書き試算メモ。右端がフル充電での航続距離、その隣がwhあたりの単価]

6000サイクル充放電の、さらには5年保証付き、さらにはパススルー充電(バッテリーを傷めずに充電しながら使える)付き、100V出力、USB type-C出力、内蔵ライト、などなど、純正バッテリーよりはるかに高機能。

そもそも、自転車に乗ってない時は持ち運んで他のことにも使えるしね。この時のお値段は24000円と高いけど、十分価値はあるだろうと判断して購入。

これより大きいサイズのものは、航続距離が伸びる以外のメリットがないうえに重すぎて燃費落ちるだろうから今回は却下。

(車に使われる鉛バッテリーは無料でもらえることもあるので検討したけれど、とても重い+希硫酸が入っているので転んだ時危ない、の2つの理由により今回は見合わせました。後述するトレーラーに載せるならアリかも)

ドングル

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

Albert van Dalenさんが作っているものは、バッテリーの残量をLED点灯で示したりできる機能がついてるんだけど、Ankerバッテリーにはそもそもデカデカと残量がデジタル数字で表示されているので、その機能は必要なし。

熱で壊さないように気をつけて太い配線をはんだ付けするだけ!

DCDCコンバーター

AnkerバッテリーはAC100V出力なので、ヤマハモーターに合うようにDC25.2V近辺に電圧を落とす必要がある。かつ、電動アシスト自転車定格で200W以上、瞬間で300〜400Wくらい要求することもあるようなので、それなりに太いものが必要だぞ、と。

ただし私がもらったフラッカーアシストはモーターが36Vとのことだったので、36Vで300W以上流せるものを探す。

そんなにシビアな電圧の要求じゃないだろうから、安いものを購入(これも最終的な結論を得るまで結局3種類買った)。

そもそも、直流24V出力できるバッテリーを選べば、DCDCコンは不必要になるうえに、エネルギー効率も良くなります。ただし充放電の仕組み作りが必要なのと、リチウムバッテリー自体が爆発を起こしうるリスキーなものなので、今回は自組みせずに5年保証のAnkerバッテリーを選びました。(あとAnkerのものよりかなり高価になる印象)

端子

なんと、ダブルのギボシ端子のメスをラジオペンチでちょちょいと曲げると、アシスト自転車の電源端子にピッタリになることに気づいたので、モノタロウで買っておいたダブルギボシ端子をチョチョイのチョイ!


以上、バッテリー→DCDCコンバーター→ドングル→アシスト自転車と接続するだけ!

わざわざ言うのも馬鹿らしいけど、もちろん自己責任で!
どうやるのか誰かに聞かなきゃさっぱりわからない人は100%時期尚早なので、やらないように!

ドキドキワクワク繋いでみたら、案の定動かない(初めてやる時のお約束!)

とか言いながら、いやー、自分もさっぱり動かず。

自転車の手元スイッチの表示点滅の様子からすると、ドングルが機能してないように思ったので、Albertさんとメールでやり取りをしつつ、ひとまず手元スイッチの故障を疑い、手元スイッチのみヤフオクで購入。

手元スイッチ故障ではなかった

元々フラッカーアシストちゃんについてた手元スイッチと同じ型番のものを調べて交換するも、症状変わらず。

そもそも、フラッカーアシストはモーターが36V用になっていて、リトルモアは25V用。丸石サイクル的にモーターを強化しているんだと思うけど、そこまでは調べきれず、本当にこの手元スイッチでいいのかもわからない。

(ヤマハ電動アシスト自転車の手元スイッチはめちゃめちゃ細かく型番が分かれているのだ)

うーんうーん。

…試しにモーター交換してみようかな?

うむ。出費がかさむがここまで来て引き下がれない。

ええいままよ!

アシストモーターを変えると・・・

36Vのモーターが良かったが、中古市場にほとんど出回ってなかったので、あきらめて適当なモーター「ヤマハPAS AMI X0L9-1005」を購入

ちなみに、ヤマハ製の自転車やバイクは全パーツが公開されてて型番を調べられます。えらい!

あわせて読みたい
PC版パーツカタログ | ヤマハ発動機 ご愛用製品のパーツカタログをご覧いただけます。

(もっと言うと、パーツ検索アプリまでありますぜ!)

このサイトを使って、買ったモーターに合う手元スイッチ(x93−82510−11)も調べてそれも購入。

フラッカーアシストちゃんの心臓&脳&筋肉&胃袋移植で気分はブラックジャック!

ありがたいことに、36Vモーターと25Vモーターはボルト位置などが全く一緒、簡単に換装できた。手元スイッチも交換して、ドングルとAnkerバッテリー、DCDCコンを繋いで祈る気持ちでスイッチオン!

とうとう起動した!

※これを撮影したのは全部完成した後なので、装備が最終verになってます

見事、非純正バッテリーでアシストの恩恵を受ける。が、、、

しっかりアシスト機能が働いて、とっても嬉しい昼下がり。

ハッキング自転車で保育園に娘を迎えに行ってみたり、無駄に近所をうろうろしたりしていると問題が発覚。

瞬停、アシストを覚えず

ときどき手元スイッチの電源が落ちて、アシストが切れる。
ちょっと勾配のある坂道だとほぼ100%この現象が起きて、いきなりペダルが重くなってとってもパニクる。

[うんともすんとも]

しばらくテストをしていると、負荷がかかると電源が落ちることが判明(瞬停というやつです)。

とっさに「突入電流が大きすぎて、DCDCコンが電力をまかないきれないんだろうな」と思っちゃったのが運の尽き(散財ルート2回目)。

DCDCコン沼にダイブイン

紆余曲折を経つつも、最終的には3台目の20A出力のDCDCコン購入

480W流せればなんとかなるだろう、そもそもAnkerバッテリー側が瞬間出力450Wなので、これでダメならバッテリーを変えなきゃダメじゃん・・・という希望と絶望の入り混じった心持ちで交換するも、電源が落ちる現象は変わらず

ワオ! どうしよう!?

小生あいにく2万4千円払ったバッテリーをさらにグレードの高いものに買い換える豪奢さは持ち合わせておらず、しばらくはアシストのパワーモードを弱くしたり、ギアを2速にして乗ったりという苦肉の策で対応するも、うーんなんていうのコレじゃない感!

落ち着いて考えると、コンバーターが耐える瞬間480W出力でもまかなえないほどの要求をモーターはしてないだろうから、あ、これもしかして平滑コンデンサ入れると解決するやつじゃないの?

困ったときのコンデンサ

調べるとありました。そのものズバリ。

Q. DC-DCコンバータで入力瞬停時に出力電圧を保持する方法はありますか?

https://product.tdk.com/ja/contact/faq/power-supplies-0036.html

コンデンサとは平たく言っちゃえば電池で、DCDCコンのあとにつけておけばそこに勝手に電気貯めておいてくれるから、自転車側から要求があったとしてもコンデンサ側のストックを流してうまいこと瞬停を回避できるよ! という話(で合ってるよね?)。

あわせて読みたい
テクニカルドキュメント:保持時間に必要なコンデンサ容量の算出方法|技術情報|コーセル株式会社 保持時間に必要なコンデンサ容量の算出方法について説明しています。

ありがたいことに平滑コンデンサの容量を計算を解説するサイトもありました。

今から思えば色々勘違いしてたんだけど、当時は
・100V 10000μFのコンデンサつければ多分大丈夫!
という結論になって、aliexpressに発注。

[コンバーターの右隣にそびえる黒いやつがコンデンサ。追手を攻撃できそうな見た目]

取り付けてみればこれまでの苦労が嘘のよう、見事瞬停がなくなりましたとさ!

(※なぜかDCDCコンの前に取り付けると勘違いしてたけど、DCDCコンの後につけるものなので本当は耐圧は100Vなくて大丈夫です)

ハッキング済み電動アシスト自転車を、もっと便利で楽しくする

バッテリーもモーターもコンピューターも移植された、まさに換骨奪胎ハッキングされたフラッカーアシストちゃん。

Ankerバッテリーを載せるために色味の似た箱を荷台に取り付け、

[こういうところケチると途端にしょぼくなるので頑張った。留め具は3Dプリント製]

さらにはトレーラーを牽引できるようにハーネスを鉄で作成。ひとまずここにDCDCコンとドングル、コンデンサが同居しております。

ドングルは大変格好悪いが、ひとまず自己融着テープでぐるぐる巻きにして耐水化。

そしてハーネスに自転車用ヒッチメンバー(牽引金具)も取り付けると、なんと「大量の荷物や子供を牽引してもアシストがあるから大変じゃなーい!モデル」に早変わり。

さらに今後は牽引するトレーラーも作るつもり。

  • 田舎で大活躍の農業用コンテナ×2が積載でき
  • かつその蓋が座席シートを兼ねていて子供×2も積載でき(もちろんシートベルト付き)
  • さらには屋根にシート状のソーラーパネルを取り付けるので
  • Ankerバッテリーを充電しながらアシストを使い走れる

スーパーいいとこ取り自転車に進化できるのだ!

現状は、とりあえず海外動画を見てマネして作った廃タイヤトレーラー。機能性ゼロ!

まとめ: なぜ電動アシスト自転車をハッキングしようと思ったのか?

いやー、鹿児島みたいな地方だと「車がないと暮らせない」という論理は相当に強固でして、それを打破できるポイントは

  • 積載量(定員含む)
  • 登坂能力
  • 耐候性(雨天・荒天時)

詰まるところこの3つだな、と。

いろんな人に聞いてみたんだけど、移動時間が車の倍かかることはあまりみんな気にしないのね。

そもそもちょっと買い物行く距離なんて5分〜10分だろうから、それが倍になったって、自転車で運動になって景色も風も気持ち良ければ大きな問題にならないのだと思う。

アシストありで登坂能力、積載が解決する。そのアシストのためのボトルネックだった、寿命の短い高価な純正バッテリー縛りもドングルによってクリアできた。

(アシスト自転車本体も、バッテリー買い換えハードルの高さのために、投げ売りのような価格で中古市場が出来上がっている)

あとは耐候性で、ひとつは運転者の頭上にもシートタイプのソーラーパネルで屋根を作ってキャノピー型にすれば、受光面積が増えて発電量も増えるし、小雨程度なら凌げると思う。ただ、横風に弱くなるので、そこら辺はまだ要検討。

あと、どんどん自転車の良さである「小型・軽量・取り回し良し!」から離れていくので、もはや別の乗り物として考えたほうが良いのだろうな、とも思う。

一人でしか乗らない車でも2年に一度の車検代 VS ハッキング済み自転車の改造費

実際、鹿児島で走ってる車なんて、一人で乗ってる人が大半ではなかろうか。

軽自動車ですらコストでいうと、車検で2年に一回6万円(以上)+ガソリン代年間平均約6万円
(総務省の「家計調査 家計収支編 詳細結果表」によると、2021年のガソリン代の全国平均は1家計で年間5万9,446円)
あとは故障して直したり、部品交換したりで+α。

かたや今回のハッキング済み自転車は

  • バッテリーのない中古アシスト自転車 ¥0〜¥10,000
  • 非純正バッテリー ¥30,000
  • ドングル ¥14,000
  • DCDCコン ¥4,000
  • コンデンサ ¥1,000
  • トレーラー周り(自作)つけるなら +¥10,000
  • ソーラーパネルつけるなら +¥15,000

てな感じかしら。ミニマムで5万弱、豪華にしても8.5万円くらいかしら。

もちろん車検なし、ガソリン代なし! 環境負荷もグッと低い
さらには便利に使えるモバイルバッテリーが付いてきちゃう。

要は、車を1年維持するコストくらいで、以後ランニングコストが極めてかからない交通手段が持てるわけ。

そりゃ車の全天候性に比べたら劣る部分はあるけれど、排気ガスも出さないし、地下資源を採掘しないし、勝る部分もたくさんある(そもそも車の値段自体が、桁一つ違うわけで)。

メーカーはこんなの作らないよ、ってことを知っといて

現状で、私が思う汎用的な移動手段の答えのひとつだと思うんだけど、大事なことは大手メーカーがそれをいつか作ると信じる/期待することではなくて、自分でも作れるようになる/作れることを知っている、ということだと思う。
(そもそも大手メーカーは絶対こういう方向には発展させないからね! 発展させたくないからバッテリー監視するわけで)

自分で作ると詳しくなるし、たくましくなる。これからの時代は「たくましいかどうか」は非常に重要な態度だと思う。

あとは、uNikeという別の、自転車を使うプロジェクトの構想もあるんだけど、それはまた完成したらご報告します!

んじゃまた!

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この記事を書いた人

考えて、作り、実践して、伝える作業を繰り返しています。 版元を作り出版した著書「わがや電力」は直販にて14000部を売上げ。 先住民技術、NVCとシステム思考、オープンソースハードウェアの知恵を使い、生態系を模倣する文明を研究中。鹿児島の廃保育園にて環境問題を解決するための工房・ダイナミックラボを運営

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