2年近く前に作ったエクストルージョン(樹脂押し出し機)。
その後、改良を加えて90cm長・45mm角の角材を作ることに成功したものの、
・材料をたくさん使う(一時期深刻なプラゴミ不足に陥った)
・押し出すのに時間がかかる
ので、しばしお蔵入りしておりました。
ところがどっこい! 事態はキューテンチョッカ!
ミクロネシア連邦から修行に来たイショーさん、ミクロネシアのためにプラ角材を作りたいと申す

今年2020年の4月からダイナミックラボに滞在していたJICA海外協力隊のイショーさん。彼がミクロネシアに渡って知ったのは、

・シロアリ被害がすさまじく、木材が長期間もたないこと
・島に海洋プラごみがたくさん漂着すること
・物流のハードルが高いので(重たいものはハワイとグアムからの海運のみ)、何らかの事情により物流が止まると、土木や建築などの資材が必要な事業は完全に停止すること
などなどであった。
ゆえにイショーは海洋プラゴミから角材を作ることができれば、ミクロネシアの木材事情とゴミ問題の両方を解決することができる!と考えたのであった。
そしてイショーはミクロネシア配属中にダイナミックラボのことを知り、下り200kbpsのネット回線の中、なんとかウェブ通話を私テンダーと重ね、コスラエ島でprecious plasticに着手することに。
しかし!
世にコロナショックが起き、JICAから緊急帰国を命じられた彼は、またミクロネシアに戻れるその日まで、ダイナミックラボで修行することを選んだのであった・・・!
(「出ミクロネシア記」より抜粋)
そんなイショーが言うのである。

「プラゴミから角材、作りたいっすね!」
若者よ、ひとつの国の未来のために、プラゴミから角材を押し出そうというのか・・・。それは、、、やらないわけにはいかないじゃないか!!!
というわけで話し合った結果、かねてからわたしが作りたかったドームハウス(直径8メートル)をプラゴミから作ってみることに。

ドームハウス用の構造材(25mm*45mm*2500mm)を、プラゴミから押し出しで作る
ひとまず、これまでに作った押出機でどこまでできるかテストしてみようじゃないか。

ホッパー(ペレット投入口)はprecious plastic pro版のホッパーを参考に変更。

それから角材の金型をアルミで作って(といってもアルミ角パイプを2.5Mでぶつ切りしただけ)、

その金型にバイクのマフラー用消音材を巻いて断熱材とし、

押出機と金型の接合部は、precious plasticで公開されている「quick release(クイックリリース、着脱しやすい継手)」にしてみました。

溶けて押し出される角材を押し返してぴっちり角を出すためのカウンターウェイトちゃん(4歳)も配置完了。
というわけで、いざ押し出し。

押し出ししながら工具で調整して、回転する機械の軸を出そうとするところがダイラボクオリティ。
数十分後、これ以上押し出せなさそう(クイックリリースから溶けたプラが溢れてきた=逆流)なので、金型をダイラボのプールにイン。これ以上ない水冷!


冷却のため、しばし待って金型を持ち上げると、、、
カラーン、コロコロ…
と音がして振り向けば・・・!

生まれたてのプラ角材!
綺麗だけど、短い!!!
30cmほど。
どうやらプラの温度が低かったために、押し出し後すぐに冷えたプラが詰まってしまった様子。
ええい、再挑戦だ!
2回目の押し出し。

おや・・・何か雰囲気がおかしいぞ?!
先ほどの失敗直後なのに、やたら嬉しそう。
何を隠そう、景気付けに鹿児島名産の焼酎をストレートでいっぱい引っ掛けたふたり。

目がおかしい。

頬が赤い。
押し出しは愉快だなぁ
そして今度はなんと2時間半も押し出して、ようやく金型が埋まったかな?というところで再度プールにイン。

あたりはもう夕暮れです。
たしか冷却時間20分ほど。
触れる温度になったので、鉄工室で金型から角材(予定)を引き抜いてみる。

お!
プラ(ポリプロピレン)が収縮して、スルスルと金型から抜ける!

おおおお!

できたーーーーー!!!
というわけで完成した2.25Mの角材ちゃん。めっちゃ嬉しい。おじさん二人、大はしゃぎです。
翌日3回目を押し出してみたものの、やっぱり2時間半かかる。
うーん、一本の角材を押し出すのに2時間半もかかってたら日が暮れちまうぜ!(実体験)
角材を作れないことはないものの、このやり方で角材を何十本も押し出すのは効率が悪すぎるし、ヒーターの使う電力もバカにならない。
なんとかして、もっと手軽に押し出せるようにしなくては!
押し出せなくなるのは、押し出しが遅いからなのでは?

と、ここでprecious plastic公式のエクストルージョンのスペックを見てみると(400V電源使え、とか日本では難しことも書いてあるから、これまであんまり参考にしてなかった)、

なんと1分間に263回転するモーターを使っていることが判明。(今までのダイラボ押出機のモーター回転数は、1分間に40回転程度)
そして、40mm四方かつ2メートルの角材の押し出し時間、なんと

8分!!!!
てことは、もうこれは単純に回転速度と、バレル(押し出し容器)内の体積の問題ですね。
押し出しが遅いからプラが冷えて金型内を素早く流動できないということですね。
というわけで、いさぎよく作戦変更することに。
インバーター+200V三相モーター(750w)をオークションでゲットして、早速改造だ!
200V 三相モーターに載せ換え

750W三相モーターはレシオ10のものにした。これだと回転数が 170rpm前後。
公式のアナウンスよりかは劣るが、これまでの4倍早いはず。
そして、実は世の中には100Vの家庭電源から、三相200Vを取るためのインバーターというものがありまして、

気軽に750Wまでの三相モーターを動かせるのでした。
迷うことなくそれをモーターにパイルダーオン(死語)。
モーターと軸のカップリングに3Dプリント品を使用

自作フィラメント界の雄、Nature3Dさんが作っている、硬くて強いフィラメントを使って、モーターと押し出しの軸を接合する部品をプリント。

ちなみにこのフィラメントは、オーブンであっためることで耐熱性、耐衝撃性などをあげることができるのだ!
うーん、3Dプリントの世界は偉大だ!
ついでに台をカッコよくした。
ついでに台をかっこよくした。(下の写真のような、よく廃棄されているパソコン&プリンターデスクをバラして溶接して作った!)

さらに、陸上自衛隊で塗装をし続けたイショーにお願いして、下塗り&塗装をしてもらう。
そして完成したのがこれ!

エクストリーム・かっこいい!!!
古いオーディオ機器のような、高級感あふれる佇まい。

制御部もご覧の通り。
今まで機械の見た目をあんまり気にしてなかったけど、見た目大事だなぁ。
(ちなみに鉄骨も木の板も両方廃材なので、材料費0円!)
エクストルージョン改の実力やいかに!?
もうね、エクストリーム早くなった。
途中、電源ドラムを使ったために電圧低下が大きくてインバーターの電源が数度落ちる、というトラブルもあったものの(太い延長ケーブルに交換でクリア)、45分ほどで2.5メートルの角材押し出しに成功!
そして、、、

エクストリーム・まっすぐ!
エクストリーム・すべすべ!
ついにできたーーーーー!!!!!
というわけでイショー、角材を押し出して子供用の椅子を作る

それから数日、イショーはプラ部屋に閉じこもり、数本の角材を押し出して、

切断して(あら綺麗)、
子供用の椅子を作ったのでした。

うーん、かわいい!
うちの子が!

というわけで、これをミクロネシア連邦コスラエ島の直属の上司に送り「俺はこういうことを学んでいて、じきにそちらに戻ります!」と伝えたらしい。立派だなぁ。
そんなイショーがクラウドファンドやってます!

結局、イショーは半年間ダイナミックラボに滞在して、プラスチックを破砕するシュレッダー、射出成型するインジェクション、押し出しをするエクストルージョンの3つを作れるようになって旅立った。
旅立ち際に彼は、クラウドファンドを始めて、自作のprecious plastic機材をミクロネシア連邦に運ぶための資金を募っています。
ぜひご支援ください!

今回エクストルージョンを改造してみて分かったこと
200V 三相インバーターのススメ
200V三相インバーターはとっても便利だった。aliexpressからだと10000円以下で1.5KWクラスのものが買えるみたい。
(後日、使ってみたら全然ダメだった。負荷かかると強制停止してしまう模様。エコワットで測ったところ、500〜600Wほどの負荷で強制停止でした。安かLOW! 悪かLOW!)
というわけで今回使ったのは三菱電機のもの。2.6万円ほど。
200V三相になると、
・正転逆転の切り替え
・回転速度の増減
が簡単にできるようになる。
また、最大のメリットとしては、日本国内で100V / 750Wクラスの中古モーターはヤフオク等ではほとんど売買されていないが、200V三相であれば、一気に流通量が増える&安い。
今回使ったモーターはなんと2500円。(200V 三相 750W / RATIO 10)

ちなみに新品の100V 750W RATIO 10モーターは5万円くらいする。

みんな、中古を買おう!
というわけでさらに改造。
カウンターウェイトちゃんの常駐化
前述のプラ角材をぴっちり出すためのカウンターウェイトちゃん(4歳)はお腹がすくとどこかに行ってしまうので、お腹も空かないしどこかに行かないカウンターウェイトちゃんをスカウト。


これで十分機能するけど、もうちょっと取り回しの楽な方法を考えたい。
おまけ:3Dプリント製のドームハブに角材をくっつけてみたところ

ドームのハブ(交点)をどう作るのかは本当に悩ましくて、世界中の人が試行錯誤してるのだけど、ダイナミックラボ版を3Dプリントで一旦試作。来年の夏までにはドームハウスを一棟完成させたい!
というわけで、イショーのクラウドファンドもよろしくね!(残り5日です!)