生分解性プラスチック・酢酸セルロースを折り紙と竹細工に塗る

目次

竹細工はいいぞ!

私テンダー、この3ヶ月で竹細工に傾倒しておりまして、

「細工」というよりかは大きいものばっかり作っております。
竹ひごを一つ一つ整えたりせずに、ざばっと割ったもののを荒く編んで、孟宗竹から大きな構造物や建物を作るのが目的。

というわけで、こちらは鶏籠(にわとりかご)
以前、軽量なチキントラクターをビニールハウスの鉄パイプで作ったけど、技術と思想が深まって、孟宗竹から作る方が人として立派だな、と思うようになった次第でござんす。

ところがですよ、竹細工だと鶏かごの屋根を防水に仕上げるのが難しい。

上の部分のザルを防水にしたいのだ!

どうしたものかと考えてた折、以前からお世話になっているNature3Dさんから「生分解性のある酢酸(さくさん)セルロース樹脂を何かに使ってみませんか?」とお誘いを受けて、こりゃ竹細工のネクストステージになりうるかも、と思ったのがことの発端、思考の突端!

なんと酢酸セルロースはプラスチックでありながら溶液にして、比較的手軽に好きなものに塗ることができるのです。
塗ることで防水性、耐候性、強度などが得られるのに、土中に埋めてしまえば分解してしまうという本物の生分解性樹脂、それが酢酸セルロース!!!

竹細工+和紙=一閑張り(いっかんばり)

まずですね、竹編みのザルなんかに和紙を柿渋や漆などで張り重ねる技法で一閑張りというものがありますよ。

防水性能+強度を出すための方法なのだけど、残念ながら柿渋には耐候性があまりない。そして漆は高い

話によると酢酸セルロースには耐候性+防水性がある(それなのに生分解性!)とのことなので、もし私の期待通りの耐候性があるなら、竹建築の屋根への展開がありうるのでは、と思ったのでした。

塗ろう酢酸セルロース with オノケンさん

さてはて、そういうわけでご近所の建築家・オノケンさんに酢酸セルロースのことを話してみたところ、「折り紙に塗ってみたい」とのことで、オノケンさんの里山事務所オフィス・チャベーロにてレッツ実験。

私は竹ザルを一閑張りにするんだい!

酢酸セルロース溶液を作る

後ろの棚にずらりと並ぶ現代折り紙作品。
ちなみにチャベロというのは鹿児島で緑茶を燻す時に使う竹ザルのこと(お写真の壁にかかってるソンブレロみたいなもの)

アセトン+ジアセトンアルコール+無水エタノールを1:1:1で混ぜ合わせ、そこに酢酸セルロース樹脂のペレットを1/10g入れれば溶液は完成。簡単!

なはずだったのだが・・・

酢酸セルロースペレット、なかなか溶けない問題

https://nature3d.thebase.in/items/58808879 から

必死すぎて写真を撮らなかったのだけど、いくら混ぜても酢酸樹脂ペレットがなかなか溶けない。
ちょっとは溶けて角が取れてる感じはするけど、シャバシャバして「塗れる」という雰囲気にならない。

おじさん二人で交代で混ぜたり調べたりすること30分。

最終的にNature3Dさんの解説記事を見つけ、ちゃんと溶けるには一昼夜かかる、ということが判明。

大人の都合で半日後に作業再開、ということで一旦解散。




今度こそ! 酢酸セルロース溶液を塗る

5時間くらい経ったらペレットがずいぶん溶けていたので塗布開始!

カエルの折り紙に酢酸セルロースを塗るオノケンさん。
「これはなかなかいい、アリですね」としきりに言っているが、折り紙門外漢には何がどの程度いいのかさっぱりわからない。

まあでも言われてみれば、
カエルが光沢(濡れ)を帯びて、重量感も増して、耐候性と保存性が増すのであればそれは何らかニーズがありそうだなー、と思う。

おそらく世界初、酢酸セルロースを塗られた折り紙カエルとタガメ

オノケンさんいわく、なんでも折り紙の保存方法にコレ!という決定打がないらしく、こんな感じで塗りながら耐候性や防水性を増すことができれば、折り紙界隈は興味を示すのではなかろうか、とのことでした。


酢酸セルロース一閑張り!

オノケンさんがカエルに酢酸セルロースを塗るかたわら、私は一閑張り計画を鋭意進めて、

ざざっと塗ってみましたよ。

ところが、塗ってはみたものの「変わった感」が少なくこの時は、本当にこれで耐候性と防水性増してるのかなぁ? という質感。

それと、一閑張りとか張子のイメージで塗っていたのだけど、酢酸セルロース溶液はでんぷん糊のイメージとは違う、というのが使ってみてわかったことだった。

紙と紙を重ねるときに、溶液でたっぷり濡らして表面張力で付く、くらいにしておけば乾いた時に「スティックのりで貼った」くらいの強度でくっつく。だからこんだけ大きく厚い紙だと、シワとか隙間ができるので、あんまりくっつかない、というのが実際でした。

もしくっつけたかったら、薄い紙を細かくちぎって重ねる必要があるかも。

以下、Nature3Dさんからコメント

一閑張りの部分は、酢酸セルロース濃度を高くした溶液を作っておくと、糊の代わりに使うこともできます。 私の場合は濃度30%のものを別に作ってあり、接着剤やパテの代わりとして使っています。


と、ふむふむ言いながら塗ってたら、だんだんと興が乗ってきたオノケンさん。楽しいらしい。
棚から色々出てきて、最後は、、

ドラゴンまで出てきた。
おそらく世界初の酢酸セルロース防水ドラゴン!

ちなみにオノケンさん曰く、このドラゴンはだいぶ昔に折ったもので、細部に納得が行ってないそうです!

後日、雨や朝露を受けた酢酸セルロース一閑張り

その後、通り雨に当ててみたり、早朝に朝露に当ててみたりして防水性能をバッチリ確認!

これは・・・可能性あるぞ!!!

というわけで、しばし耐候試験をしてみます。
狙いとしては、

  • 紙や布に塗って、雨をしのげる幕として機能するかどうか
  • それがどのくらいの期間保つか
  • 防水性が落ちたところに再度上塗りすることで、再度防水できるか

てなところだろうか。

Nature3Dさんに質問したところ、表面に艶やかなコーティングができるまで塗るには「5回くらいの塗布」とのことでした。
あとは第二次世界大戦初期までは、戦闘機の翼の幕にも「布+酢酸セルロース」で使われたそうなので、それ相応の耐久もあるはず。

今後に乞うご期待!


Nature3Dさんの、酢酸セルロース樹脂 (500g)の販売はこちら

https://nature3d.thebase.in/items/58808879

その他、アセトン、無水エタノール、ジアセトンアルコールなどが必要です。用途に応じて内訳が変わりますが、酢酸セルロースペレットを買うときにNature3Dさんに質問した方が確実だと思われます!

ジアセトンアルコールはこちら

https://nature3d.thebase.in/items/89473009

酢酸セルロース溶液の揮発速度を調整するために使います。毒性低め。

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この記事を書いた人

考えて、作り、実践して、伝える作業を繰り返しています。 版元を作り出版した著書「わがや電力」は直販にて15000部を売上げ。 先住民技術、NVCとシステム思考、環境再生技術の知恵を使い、生態系を模倣する文明を研究中。鹿児島の廃保育園にて環境問題を解決するための工房・ダイナミックラボを運営

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