[保存版] Precious Plastic shredder for 100V のV2が完成しました! BOMと3Dデータをオープンソースとして無料公開!

どうもこんにちは。テンダーです。
ダイナミックラボ始まって以来の大プロジェクトとなった Precious Plastic Japan。中でも廃プラ破砕機を日本仕様に作り直したテンダー作の Prcious Plastic shredder for 100Vのバージョン2(=V2)が先日完成しました!
※この記事の下部からBOM(全部品表)と、FUSION360用の3Dデータをダウンロードできますので、これまでの変遷と変更点の細部、それから抱腹絶倒のストーリーテリングに興味のない方は一気にページ下部へどうぞ。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
ちなみにこの 道具 は クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供します。気にしてね!
目次

V1からの改良点

  • 六角軸を諸般の事情で太くした。対辺35mmに。
  • それに伴いベアリングもUCFL206に変更
  • 六角軸の両端を右ねじと左ねじに仕様変更。旋盤を覚えて自分で切ってます!
  • シーブ周りの固定方法を変更
  • ライナーをレーザーカットPPに変更。
  • 電源は家庭用100Vのまま、三相200Vの1.5kWモーターで運用することに成功!
  • モーターが倍大きくなったことで、破砕スピードが倍に。V1よりもサクサク破砕できます。
  • その他、細かいところをたくさん!
ちなみにV1については、2020.03.24の以下の記事をご参照ください。
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shredder for 100V、要点の解説

六角軸の最適化 → 対辺35mmに大幅増強

これまでのV1シュレッダー(precious plastic 本家のbasicモデルも含め)は、対辺20mmの六角棒を軸にしていたのだけど、そこからJIS規格的に算出されるマシンキー(6mm*6mm)ではプラ破砕に耐えない、との結論に私は至った。 というのも6mm四方のキー溝だと、日用品のプラ破砕ですらキーにかかる力に六角軸(S45C製)が耐えきれず、軸がメリメリとえぐられてしまうことがあるので、そもそももっとごついキーじゃないと無理だな、と。 というわけで六角軸をシュレッダー用に削り出してくれる鉄工屋さんをあちこち探したのだけど、 個人でやってるところは「一本2.5万円」、ウェブ見積もりを取ってくれるプロトラブズさんはなんと「一本13万円!」と。

いやそれ頼むくらいなら金属旋盤買えちゃうわ! という値段を提示され、
しょうがないからまたもや自分でやることに。(このパターン、人生数百回目…!) たまたま近所の鉄工屋さんに鋼材を注文して施設を見せてもらったところ、「誰も使い手のいない」という立派な旋盤が奥にしまってあって、さらには「使っていいですよ」とのこと。 渡りに船かつ乗りかかった船だ! というわけでこの旋盤を時間貸しで使わせてもらい、いつもの義父(金属加工の鬼)に教わりながら、金属旋盤を覚えつつ、
旋盤を前に、逆光を背負う鬼とその孫の図

できた! ムシャクシャしてやりました!! 初めてでも、半日×2日で無事に3本完成。次やれば一本当たり1時間半で仕上げられるかも。
(これを一本13万円の見積もりってなんなんだ・・・。ちなみに材料は一本1000〜2000円ほど) 写真をよく見るとわかるかもしれないけど、六角両側のねじが右ねじと左ねじで回転方向に対して緩み止め機能を付与。 これは旋盤のねじ切り機能で作ったのではなく(さすがに初体験からそこまでを数時間で身につけるのは大変)、なんとググったらM35の右ネジ左ネジのダイスが3500〜4500円でamazonで売ってました・・・!

誰が使うんだ! 俺か!
(ちなみに適合するダイスハンドルの方が高かった。なんでやねん!) これを旋盤の心押し台で六角棒に押し付け(=誰がやっても極めて垂直になる)、旋盤のでかいチャックを手で回してネジ立てました。

アイデアの勝利!
(大急ぎで取り組んでいたので写真なし。残念!)

シーブ(粒度選別フルイ)を改良

元のbasicモデルの設計があまり良くなかったので、薄いパイプを足すことで着脱容易性が大幅にアップ。着脱が容易になることにより、必要に応じて破砕後のペレットの粒度を変えやすくなった。 ちなみに、もうちょいシーブの目を小さいものにした方が precious plastic シリーズでは使いやすいペレットの粒度になるが、破砕時間がグッと増えるので迷い中。

家庭用の100V電源で三相200V・1.5kWモーターの運用を実証!

こちら、写真下部はヤフオクにてゲットした三相200V、1.5kw、ギア比たぶん37前後のモーター。でかい。重い。一人でなんとか持てるくらい。
このモーターに三菱のインバーター Freqrol D700をパイルダーオン。
真ん中の、アナログとデジタルの融合途中のような平成っぽい機械が Freqrol
このインバーター・Freqrol D700がとっても勘所でして、この機械はご家庭の100V電圧を、なんと三相200Vに変換する機械です(ただし750Wまで)。 三相200Vモーターを precious plastic japanが扱いたい理由は
  • 中古モーターの数が豊富。100Vの750Wギアモーターに比べればはるかに多いので探しやすい(ちなみに100Vで750Wよりも大きなモーターを探すのは至難の業。市場にほぼない)
  • 同じ理由により、100Vのモーターよりも200V三相の方が、中古市場価格が安いことが多々。
  • 正転逆転が容易。何かが挟まって動かなくなった場合に解除しやすい
  • スピードコントロールが容易なので、低速で動かして観察し、問題の切り分けをしやすい
と、メリットいっぱいの三相モーター。
さらにこのインバーターFreqrol D700を使うことにより、
  • 100V契約のほぼ全てのご家庭で200V三相モーターを使えるようになる
  • JOG運転(一瞬だけ動かす)ができる
  • 電流制御での自動遮断機能などが内蔵されている
  • 設定で「7.5A流す」設定にしてしまえば実は1.5kWのモーターも使える・・・!
そうなんです。なんとインバーター側で電流を7.5A流すことを許容してしまえば、7.5A×200Vで、1.5kWモーターが使えてしまうのです。 このやり方はもちろん、商品のそもそもの目的とは違うので、試す方は自己責任でお願いします。(インバーター設定関連の気づきは本文下部に記載) ちなみにテスト環境では、かなりごついプラ材(ポリプロピレンの厚み26mm板!)もなんとか砕けました。ただ、負荷がかかってシャットダウンしつつ、おっかなびっくりで再起動しつつ、という感じ。
また、1ヶ月ほど色んな形状のポリプロピレンで高ストレステストをしてみた結果、なんと6mm鉄板製のシュレッダーの刃が曲がっていたので、あんまり分厚いものを砕くのはこの刃の形状では無理、と結論づけました。(汎用の破砕機の刃はもっと短い)
赤線が真っ直ぐの線で、それに沿う刃がぐにゃりと曲がっている
V2はおそらく、「13mm厚までのPPは破砕できる」と謳っていいと思う。

その他、細かいところ

0.2mmのライナーをPP製に変更、レーザーカットで作る

自作したレーザーカットでクリアファイルを切断、ライナーを作る。クリアファイルはちょうど0.2mm厚くらい、かつ破砕する相手のポリプロピレンと同じ材料なので、仮に異物混入したとしても問題が起きづらい。 レーザーがない or 使えない人はカッターとハサミで十分作れます。作業時間、一人で2時間くらいか?

ローラーチェーンをNo.50に変更。

これまで、もっと細いチェーンを使っていたのだけど、何度か破断したので今回から#50のチェーンを使うことにした。チェーン代が上がるがやむをえまい。 ギア比が50くらいの1500Wモーターが手に入れば、モーターとシュレッダーをダイレクトドライブで直結できるので、チェーン&スプロケット代がまるっと浮く。けど、そんな幸運なかなかないので、今回はチェーン&スプロケットです。 あと、ダイレクトドライブになるととても重いモーターを高い位置に持ってくる必要があるので、それも避けたかった。(重心が高くなり転倒の危険が増す)

アイドリングプーラーの据え付けについて

自転車と同じように、チェーンのたるみを取るためのアイドリングプーラーは色々考えたけど「キックバネ」という部品の要求を満たすものが高価だったために、悩んだ挙句、自作することに。鬼にも手伝ってもらい、手作りかっこいい感じになったが、できたあとに「握力鍛える道具のバネで良かったんじゃん…!」と気づきました。
100均でも発見。キックバネそのもの
握るのにキックとはこれいかに!

おまけ:レバーシャーとドッキングできるようにした!

Shredder for 100Vは、刃の数を弱い電源に最適化している結果、大きいものが投入できません。よってプラごみのプレカットが必要なので、色々考えた結果、レバーシャー(青いもの。めちゃめちゃ強い人力切断機)が最適、という結論に。 なんとこのレバーシャー、人力で6mm鉄板も切れちゃうんだぜ! 写真ではわかりにくいが、レバーシャーを木の台車に固定していて、その台車がシュレッダーの下にスライド&固定されると、シュレッダー全体の重さで固定されて使える仕組み。 大きなプラごみは、このレバーシャーでパスパスと細切れにしてからシュレッダーに投入する。切屑も出ないし、運動にもなるしいいこといっぱい!

ダウンロード:BOMと3Dデータ、設定類

というわけで無事に完成したShredder for 100V / V2。
そして、みなさんお待ちかねのオープンソースデータは以下から。 今回初めてオープンソースハードウェアを全公開するのだけど、まあ、、、正直なところ、、、、これ一人でやるの、、、、、

苦行と酔狂の域ね!!!

このくらいの複雑さのものをチェックしながら、リストにまとめたり、わかりやすくリンク貼ったりって、なんというか、、、もう、、、つらい。 というわけで、抜けとか間違いとか多々あると思いますが、その時は私に言うのではなくて(言ってもらえたら助かりはするんだけど)、どうぞ各々で改訂版のV2.1を出していただきたい。 日本のオープンソースハードウェアを進めるのは、この記事を読んでいる君だ! (どかーん!)
話は逸れるんだけど、私が2016年8月にprecious plastic に加わった時からもう今月でちょうど5年なのだけど、私の知る限り日本ではその間誰も、オープンソースとしてのローカル日本改良版を発表していない・・・

(precious plasticにインスパイアされたと自称する樹脂製品メーカーで、関連する機器の特許を取った人はいたが = オープンソースの真逆!) オランダの元データやアイデア、情報の利用には喜んで乗っかるが、自分でオープンソース文化を作りあげていこうという意識が、日本では特に低いように私には見えます。そういうのをフリーライダーと言います。残念だ!

矜持には矜持で返そうぜ!
というわけで言い出しっぺから公開します。ムシャクシャしてやりました…!

BOM(全部品表)はこちら!

・BOM google spread sheet ・モーター選定表(テンダー個人用途) google spread sheet ・六角軸の図面はこちら PDF

3Dデータ(FUSION360)はこちら!

・Shredder for 100V – V2 https://a360.co/3rDzGNO

レーザーカットデータ一式はこちら(DXF)!

鉄板をカットする数量や、厚みの指定のPDFも入っています。それとlinerというフォルダは、クリアファイルをカットするデータなので、鉄工所に出しても「?」となるので出さないように!

インバーターのマニュアルについて(重要!)

まず、このインバーターにはなぜかマニュアルが複数あり、
・カタログ(カタログとは名ばかりでカラーでほどほど詳しい。便利)
・基礎編(製品に元から付属する説明書)
・応用編(とても詳しい。最終的にはこれを読む必要がある)
・シリアル通信編(PCと接続する場合。ただし専用ソフトには高価なIDが必要っぽい)
などあるようです。 ・カタログPDF http://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/catalog/inv/l06056/l06056m.pdf ・基礎編と応用編PDF https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/faspec/download.do?kisyu=/inv&formNm=FR-D710W&category=ex&id=spec 最初はよくわからなかったのだけど、製品に付属する説明書だけでは、それぞれのパラメータとその値についての解説が載っていないので、まず理解できません! よって、カタログか応用編のPDFが必要になります。要チェック!

インバーターのパラメーター設定例

テンダー設定のインバーターパラメータリストがこちら。 勘所は、Pr.9の「電子サーマル」を「7.5(A)」にすれば1500Wモーターが使えるのと、
Pr96.で「汎用磁束ベクトル制御」にしてからの「オートチューニング」で、低速時のトルクが上がるみたい。(これをやらないと Over current でよく停止する) ただ、インバーターに関してはモーターとインバーターに詳しい人からのお知恵を待っています!
レッツジョイン・オープンソース! 一旦こんなところかな?
一度手放したいので、後は能登慣れ大和撫子!

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この記事を書いた人

考えて、作り、実践して、伝える作業を繰り返しています。 版元を作り出版した著書「わがや電力」は直販にて15000部を売上げ。 先住民技術、NVCとシステム思考、環境再生技術の知恵を使い、生態系を模倣する文明を研究中。鹿児島の廃保育園にて環境問題を解決するための工房・ダイナミックラボを運営

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