海岸清掃に行って拾ったアルミ缶とプラゴミから、金型を作ってうれSEAバングルまで射出成型した話

ご無沙汰しています。テンダーです。 はてさて今日は、Precious Plasticの修行のために、ただいまミクロネシア連邦からダイナミックラボに来ているJICA隊員イショーと、鹿児島県南さつま市の海岸清掃に行って、拾ってきたゴミから射出成型をした、という話です。 アルミゴミから金型を作るのは以前達成していて、
アルミゴミから金型を作り、プラごみを射出成形して製品が出来ましたよ!
プラゴミから破砕して射出成型したこともこれまた達成しているので、
プレシャスプラスチック、インジェクションマシン(射出成形機)の説明
今回はその合わせ技、ということになりますな!
ただし、海岸漂着プラは紫外線劣化が激しいうえに、塩や砂、フジツボなどの望まれない物質が入っているので、街でゴミを拾うのとは一味違いましたよ。 Precious Plastic Japanへの相談で多いのが「海洋ゴミをなんとかしたい」というのがあるけれど、じゃあ実際にやってどうにかなるのか? の実証であります。 ついでに今回破砕に使ったのは、ダイナミックラボが開発したShredder for around 100V。
安い!簡単!効率いい! precious plastic シュレッダーを大幅改良しました
それでは情熱と海風の吹き荒れた、熱き青春の4日間をご覧ください。
目次

1日目。ことの発端、海ゴミゼロアワード

少し前にお知らせをいただいていた海ゴミゼロアワード。 コロナ騒動やら何やらで時間が経ってしまい、気づけば締め切りまで後1週間。 この日の夕方頃から応募する? どうする? みたいな話が始まり、話すうちに盛り上がって、 ミーティングして、海から拾ったもので、きれいなバングルを作ることに。
3Dプリントで作ったバングル試作品
さっそく3Dプリントで、数種類のバングルのサイズ感テスト。これにてこの日は終了。

2日目。いざ海岸清掃に!

朝早めにダイナミックラボを出発、向かう先は南さつま市・新川海岸
市の観光交流課に電話確認したら、ここが一番海ゴミが多い、とのこと。 網とロープをたくさんもって、いざ出発。
寡黙なイショーが「なぜそんなにたくさんロープを?」という目で見ている気もするが、まだまだ甘いな若者! ということで、わけも説明せずに出発。 海岸に着くなり、素敵なものを発見!
海岸に落ちている大きなゴミ箱

ゴミ箱。

イショーは「でっかいのありましたね」みたいな感じだったものの、わたくしテンダーからしたら全然違いますよ。 ゴミ箱よ、きみは、、、

ショイコになる運命なのだ!

どーーーーーーん!!!!
ゴミ箱をショイコにした1
あれよあれよという間に、テンダーの華麗なロープ捌きによりショイコになったゴミ箱さん。以後、プラゴミ拾いに大活躍!
ゴミ箱をショイコにした2
ゴミ箱をショイコにした3
姿勢も良くなる副作用!
というわけで幸先よいので、海岸をもうちょい行ってみる。

アルミとポリエチレン狙いの海岸清掃(通ですね!)

ちなみに今回の目的は、
・アルミ金型を作るためのアルミ缶(or アルミゴミ)
と、
・砕いて射出成型するためのポリエチレンごみ(PE) の2種をゲットすること。 アルミはそもそもアルミの簡易金型(ひとつの相場がなんと50万円ほど)を作るために必要なのでともかく、なぜポリエチレンをわざわざ拾いに行くのか?というと、 テンダー家は山で暮らしていて、そもそもプラっぽいものをあまり買わないので、なかなかポリエチレンが手に入らないのでした。よって、今回は憧れのポリエチレン・ハンティング! どんな素敵なエチレンちゃんが待っているのかな! と胸を高鳴らせ(もう若くないので動悸と息切れとも言う)、さらに進むと、あるわあるわカラフルなポリエチレン!
海岸に落ちている赤いポリエチレン
シャア専用らしきポリエチレン
海岸に落ちている黄色いポリエチレンシート
かっこいい袋。これもポリエチレン
海岸に落ちている黒い魚用の罠
これは魚を捕らえる罠。エンドレスで魚を殺し続けてしまうので、必ず拾う。これもポリエチレン
そしてさらに奥地へ行くと、、、 あまり劣化してないゴムチューブ!(写真撮り忘れた)
これは機械のパッキンに使えるので即ゲット。 さらに行くと、、、
海岸に落ちている青い200Lタンク
大物いた!
200Lポリタンク! ここでも華麗なロープ捌きを見せるわたくしテンダー。
大きなポリタンクをロープでからげて、
ついでに落ちてた流木で天秤棒を作り、拾ってきたものでバランスを取れば、、、
まさに江戸の珍商売! 元自衛官のイショーが運んでくれました(実はかなり重い)。
海岸で拾った全てを天秤棒で運ぶ
というわけで1時間半の収穫。
海岸清掃の獲れ高
金と同じ値段で取引されるという、マッコウクジラの結石「リュウゼンコウ」は今日もありませんでした。
大物を拾ってしまったので、細かいものをあまり拾えず、まあでも普通の人が海岸清掃で拾うサイズじゃないだろ!ということで、良しとする。 ちょっとだけどアルミ缶とPETボトルも拾えた。これも使うつもり。
海岸清掃で拾ったPET類
お写真右上の帽子も、素材はポリエステル100%。
PETとほぼ一緒なので破砕して混ぜちゃうつもり。
帰りはモジョカフェに寄ってランチした。スムージー飲んじゃったぜ!
南さつま市モジョカフェ
お写真は南さつま市観光協会ウェブサイトよりお借りしました

プラを洗う。選別する。

帰ってきてひと休憩したら、プラゴミの砂やら塩やらを落とす。 いきなり洗うと塩と砂がすごくて、マイクロプラ流出防止用に使っていたメッシュがすぐ詰まってしまったので、まずコンプレッサーのエアで吹くのが良い塩梅でした。
海岸清掃で拾ったものの砂を、エアで吹き飛ばす
その後雨水タンクの水で洗い、乾かす。
海岸清掃で拾ったものを洗う
乾いたら、いざ選別!

プラの判別。きみはポリエチレンかい? それともポリプロピレンかい?

いろいろな種類のプラスチック
地味だけど山場。たぶん1000万の海岸清掃ファンが困るであろうこと、それがプラの判別。 拾ってきたのがポリエチレンなのか、ポリプロピレンなのか。それが問題だ。
(それ以外の暮らしの廃棄物として出るプラの判別はそこまで難しくない実感) 工業的には光を当てて、跳ね返ってきた光の波長の強度で判別するらしいのだけど、そういう機械はまだお高い(ただしオープンソースのものもあり)。 ちなみにこれまで私は経験則(海で使う柔らかいバケツはポリエチレンだよね、みたいなの)で判断していたので、人に伝えるためにちゃんと調べたことがほとんどなかったのでした!

とりあえず燃やす

めっちゃむずかった。ポリプロピレンは火がつきやすく、炎が青く、先端だけ黄色になるらしく、かつ匂いも甘いらしいのだけど・・・

やってみたらポリエチレンもほぼ同様でした!

却下!

一定の温度に温める

140度のアイロン
アイロンの目盛りを弱ちょいくらいにすると、ちょうど140度くらいだった。 140度は、ポリエチレンは溶けるがポリプロピレンは溶けない温度なので、このアイロン面に押し当ててプラが変形するかどうかで判別できるはず。
140度のアイロンにポリエチレンを押し付ける
お!お!
溶けてる! ならばこれはポリエチレン。
140度のアイロンにポリプロピレンを押し付ける
ペットボトルキャップはポリプロピレンなので、溶けない!
正しい! と思いつつも、ポリプロピレンと推測したものが溶けたり、その逆もありで、次第に混乱し始める。
アイロン判別が難しくて頭を抱える
うーん・・・。
自信を持っていた自分のプラ判別観が、そこそこ間違っていた疑惑。。。 えーとえーと、 こういう時は温度制御だ!
温度制御機構を入れた調理用鉄板でテスト
リサイクル屋で500円で売っていた「お一人様プレート(プラ溶融用に買った!)」に温度制御モジュールをつけて溶融テスト。
温度制御モジュール
しかし温度センサーがちゃんと固定できず、センシングできる温度が怪しいので、非接触温度計も使いながらダブルチェックで進めると、、、
140度でのポリエチレン溶け具合テスト
140度だとポリエチレンは、鉄板にくっついて粘る! 130度だとそうはならない。 すごくいいが、もう一声。
温度をきちんとセンシングできてないのが引っかかる、、、と考えながら横を見ると、
エクストルージョン
温度調節しているプラ用の機器、ありました。 長いプラの角材を作るために作ったエクストルージョン(押出機)。 この左端の金色の口金が、バンドヒーターといって温める&温度調節しているので、
バンドヒーター上で溶けるかテスト
140度で溶けた!君はポリエチレンだな!
ここに押し当てれば簡単に分かったのでした。 初めからやればよかった! というわけで、拾ってきたものの判別が概ね終了、ひとつだけで100度で溶けたものがあるので、それはアクリルだと思う。透明だったし。 思いのほかプラ判別に時間がかかり、この日はすっかり疲れて解散。
ちなみに、アイロン押し当て実験が失敗だったのは、多分屋外で風の影響があったから! ご家庭では屋内+アイロン+天ぷら用温度計がわかりやすいかもね!

3日目。アルミを溶かして金型を作る

アルミ溶融炉に木炭を入れる
3日目は朝から、ダイナミックラボの旧トイレ室(あまりに廃校のトイレが多すぎるので、使わない便器を全て撤去した部屋)に、七輪+ペール缶のアルミ溶融炉をセットし、木炭で溶かす金型作りを開始。 拾ってきたアルミ缶が少なかったので、ラボで集めていたアルミ缶やらアルミクズやらもついでにIN。
プロパンボンベから作った溶融釜にアルミ缶を入れる
ここに写っているアルミ缶は全て海岸調達
アルミを加熱する
こんもりアルミ缶を入れて、ドライヤーをオン!
アルミを加熱する
炎が大きくてもまだ400度台
こんなに燃えてても鍋側面は400度台
アルミが溶けるには660度が必要で、少なくとも鍋底面が真っ赤にならないとアルミは溶けない。 ノロ(アルミに混ざってた不純物など)をすくいとったり、炭を足したり、20分後。
アルミが溶けてサラサラになっている
サラッサラのアルミちゃん!

いざ鋳造!

今回は、奥さんが持ってたお菓子の缶に石粉粘土で注ぎ口をつけてやってみる。
かなりアルミをたくさん溶かしたつもりだったけど、缶に目一杯入れられなかった。これだと天面が平らにならない。 悔やんでも仕方ないので、アルミが冷えるまでしばし待つ。 10分後、缶を開けると、、、
アルミが冷えて固まった
アルミが冷えて固まった
食パンみたいなアルミ出てきた!!! やっぱり天面は流体のようになってしまったけど、ひとまず無事にアルミブロック鋳造成功。 残った炭火でご飯を炊いて、
残った炭でご飯を炊いた
スタッフがおいしくいただきました。

「今年のクリスマス、プレゼントに何が欲しいの?」「平面!」

というわけで平面が欲しいのですよ。平面。 平らな面がないとどうにもこうにもならない。寸法も測れないし、そもそも金型として閉じることもできない。 そこで、ジャンクで買ってきたサビサビのボール盤をレストアして、さらに大型機械から取り出したスライドテーブル機構を組み合わせて作った、自作フライスのフラちゃん!
自作フライス盤
サビをたくさん落としてグリスアップ、モーターも交換、スライドテーブル+マシンバイスまでつけた!
これを使って、エンドミル(回転刃)を一定の高さに保ちつつ、材料の方を動かせば理屈上平面なわけです。(しかしそれは、材料の土台が「仮に平面であれば」という話。)
アルミブロックの切削
アルミブロックの切削
というわけで、原理と操作法をイショーにお伝えして、4時間かけて、4面の平面を出してもらいました・・・!(サンタさんとイショー、ありがとう!) ちなみに、イショーのコメント ↓
きれいに四面仕上げ
「これは、時が立つのを忘れますね・・・」 楽しかったらしい。(無口だから外からはわからない)

いよいよ型彫り

4面の平面と平行が出た時点ですでに夕暮れ。
しかし我々に猶予はなかったので、そこから型彫りへ。
金型切削データを作る
FUSION360で拙作の切削データをさっそく作り、 面出ししたアルミブロックをCNCにセットし、繰り返しテストをしてからいざ切削。
実際にCNCで切削する
(あ、送りが早すぎた・・・)
実際にCNCで切削する
ビットが折れないかドキドキしながら無事完了。
出来上がった金型
またしてもgcodeのイタズラで、開けなくていいところに太い穴を開けてしまった。アルミパテで塞ごう。 それにしてもみんな、これ、海から拾ってきたゴミで出来てるんだぜ!

4日目、最終日。金型の蓋を作り、プラを破砕して、射出成型する!

金型のふたを作る
4.5mm鉄板を切り、ケガいて、流入口を溶接して金型の蓋を作る。今回は急いでいるので簡単な作りにした。
精密測定道具、定盤、ハイトゲージ、マスブロック
精度出しも定盤とハイトゲージ、マスブロックを使えばお茶の子さいさいですよ! その後、ポリエチレンと確定したものを集めて、
いろいろな種類のプラスチック
シュレッダーに入るようにプレカット、
プリント裁断機を使ったプレカットの様子
廃校にあった「先生がプリント切るやつ」で廃プラをプレカット。
足で踏んでプレカット
紫外線劣化しているものは足で踏んでも割れる
プレカットしたものをダイラボオリジナルシュレッダーに投入してペレット化、
自作のプラシュレッダーに投入する
そして出来上がった、貴重なポリエチレン製のカラフルなペレット!
これをインジェクションマシンに投入して、いよいよ射出成型!
自作の射出成形機の押し出しレバーを人力で引く
自作の射出成形機の押し出しレバーを人力で引く
むむ、手応えあり! 金型を開けると・・・・!
出来上がったバングル

おおおおおお!!!!!

思いの外すんなりできた。サイズもぴったし。
これは、、、うれSEA!!!!!!!!

うれSEAバングル!

というわけで、いろんな色にしてみた。
たくさんの色のバングル
いやー、いい!
これはいい!!!
うれSEAバングル3色
腕につけてるとね、つい見ちゃうね。
綺麗にディスプレイされたうれSEAバングル
見るとね、海のこと考えるね。
うれSEAというか
憂うSEAね。 各地の海岸清掃で、終わった後に、拾ったゴミからこれができたらうれSEAね。
それが海をきれいにした証にもなるね。 スバラSEA。
イショーとテンダー、バングルをつける
4日間を共に走り抜けたイショーとパチリ。 今回のノウハウもオープンソース化して、全国の海岸清掃で収益モデルを作れるようにしたい。 さらにコンセプトをもう2、3ひねりして、海ゴミゼロアワードに応募しまーす。 乞うご期待!

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この記事を書いた人

考えて、作り、実践して、伝える作業を繰り返しています。 版元を作り出版した著書「わがや電力」は直販にて15000部を売上げ。 先住民技術、NVCとシステム思考、環境再生技術の知恵を使い、生態系を模倣する文明を研究中。鹿児島の廃保育園にて環境問題を解決するための工房・ダイナミックラボを運営

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